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月の光・星の光8

病院に戻ると、ちょうど夕食の時間が終わるタイミングだった。 病室に行き仕切りのカーテンを開ける。 薫のベッドの脇には、パイプ椅子を引き寄せて、和臣が座っていた。 樹は内心、ヒヤリとした。 朝霧が薫に何を言い出すのかも不安だが、和臣はもっと危険だ。彼は薫をあまりよく思っていないのだ。 樹はさりげなく薫の顔色を窺ってみた。 「お帰り。思ってたより早かったな」 薫はにこやかに微笑んでいる。 ……大丈夫。和臣くんは余計なこと、言ってない。 樹はぎこちなく微笑み返して 「うん。にいさん、具合はどう?」 「ああ。もう薬の影響はないみたいだ。さっき診察を受けたけどな、医者もこれなら大丈夫だろうって言ってくれたよ」 「そっか。よかった……」 樹はほっと胸を撫で下ろす。カーテンの向こうに控えていた朝霧と月城が顔を覗かせた。 和臣は椅子から立ち上がると、胡散臭そうな顔で朝霧をじっと見つめている。 樹はベッドに歩み寄り 「にいさん。あの……こちらが、朝霧さん。朝霧恭也さん。僕の……義理のお父さん」 薫は頷くと、朝霧の方に視線を向ける。 「初めまして。樹の兄の藤堂薫です」 朝霧はゆっくりとベッドに近づくと 「初めまして。薫くん。樹くんからいろいろと君のことは聞いているよ」 朝霧が差し出した手を、薫はぎゅっと握り締め 「お会い出来て嬉しいです。でも……お若いんですね。ちょっと驚きました。樹を養子にしてくださった方というので、もっと年上の方を想像していましたから」 朝霧はふふっと笑うと 「そう。私は幾つぐらいに見えるかな?」 薫は首を傾げ 「年齢をあてるのは、実は得意じゃないんですが……私とそれほど変わらないように見えますね」 朝霧は笑いながら頷いて 「うん。君はたしか……今年29かな?私は君より5年ほど長く生きているよ」 薫は目を見張り 「ああ……じゃあやはり想像していたよりお若いですね。40代ぐらいの方だと勝手に思ってましたので」 「なるほど。樹くんは22だから、私とはひと回りしか違わない。父親というには少し若すぎるかな?」 苦笑する朝霧に、薫は慌てて手を振り 「いえ、そんなことは。失礼しました。アメリカでは樹がいろいろとお世話になったそうで……。ありがとうございます」 樹は和臣の座っていたパイプ椅子を朝霧の後ろに置き直して 「座ってください。あ……何か飲み物を、」 「樹くん、いいよ。君も座って。飲み物は俺が買ってくるから」 月城がすかさずそう言って樹をその場に押し留めると、カーテンの向こうへ消えた。 樹は壁際から予備のパイプ椅子を持ってきて、朝霧の隣に腰をおろす。 「体調はもういいようだね」 「はい。この分なら明日にでも退院出来るそうです」

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