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月の光・星の光13

「樹くんが、気になるかい?」 苦笑しながら朝霧にそう言われて、薫は慌ててカーテンから視線を戻した。 「あ……いえ、すみません」 「いいんだ。気になるよね。樹くんも今頃きっと落ち着かない気分だろうな」 薫は頷いて目を伏せた。 正直、朝霧と急に2人きりにされて落ち着かない。初対面な上に、朝霧は義理とはいえ樹の父親なのだ。 その朝霧が、樹に席を外させて自分とサシで話したいという。 どんな内容なのか考えると、緊張してくる。 「私は樹くんの側の事情はほぼ把握しているつもりだ。だから今度は君に、今後の覚悟を聞いてみたいと思ってね」 薫は顔をあげて、朝霧を真っ直ぐに見据えた。 「覚悟……」 「無駄な前置きは好きじゃないからね。ずばり聞くよ。君は、樹くんに、まだ未練があるのかな?」 薫は息を飲み、目を見開いた。 「君たちが、血の繋がった兄弟で、尚且つ身体の関係を伴う恋人だったということは知っている」 「それは……樹が?」 「うん。最初は話したがらなかったがね。今でもその話はあまりしたがらないよ。だが、いろいろあって、私が事情を聞かざるを得ない状況だったんだ」 薫はゴクリと唾を飲み込んだ。 朝霧はそのことを知っているだろうとは思っていた。だが、こんなにハッキリと切り出されるとは思っていなかったのだ 「その……事情というのは……」 「うん。それは話すと長くなるからね。おいおい順を追って説明しよう。まずはさっきの質問の答えを聞かせてくれないか?」 朝霧は穏やかな口調だが、その言い方には有無を言わせぬ響きがある。 薫は口篭り、少し考えてから 「そう……ですね。俺はまだ、あの子が好きです」 「兄としてではなく、男としてかい?」 薫は細く息を吐き出すと 「はい。もう忘れなくては…と思っていました。でも、顔を見て思い知ったんです。まったく忘れることなど出来てない自分に」 「なるほどね。思い知らされてしまったのか。君も、樹くんも」 「え……?」 「それで、君はこれからどうするつもりだい?結婚、しているよね、女性と。子どもはまだのようだが」 薫は、唇を噛み締め俯いた。 それは朝霧に念を押されなくても、自分でも分かっている。妻がいるのだ。冴香という妻が。 「ええ……。そうですね」 「君には、その女性に対する責任がある」 「はい。分かっています」 朝霧は、ふうっと吐息をつくと 「私は君を断罪しに来たわけじゃないよ。顔をあげてくれ」 薫が顔をあげると、朝霧はちょっと複雑そうに微笑んでいた。

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