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月の光・星の光12
後ろ髪を引かれる思いで2人を残し、カーテンの外に出ると、複雑な表情を浮かべた月城が待ち受けていた。
「大丈夫かい?樹くん」
「あ……はい」
樹は目を伏せた。
いつもなら、反射的に大丈夫と答えるのだが、今回は全然、大丈夫ではない。
「なあ、行こうぜ」
月城の後ろから、和臣が近づいてくる。
普段着にパーカーを羽織って、ポケットに手を突っ込んでニヤリと笑った。
「行くって……どこに?」
樹はおっとりと首を傾げる。月城は苦笑しながら和臣を横目で睨んで
「僕が樹くんと一緒にどこかファミレスにでも行ってくるよって言ったら、自分も行くってきかないんだ。勝手に外出許可まで貰ってきて」
和臣はムスッとして
「だって俺、身体はもうなんともねえもん。こんなとこでじっとしてると気が重くなってきちゃうしさ。身体もなまってくるし」
樹は呆れたように和臣を見つめて
「君、全然じっとなんかしてないよね?僕らと出掛けてる……」
思わず突っ込むと、和臣は目を逸らし無言で首を竦めた。
「和臣くんは病院の夕食を取ってるけど、我々はまだだしね。近くの店で済ませてこよう」
樹は頷くと、カーテンの方をちらっと見てからドアに向かって歩き出した。
朝霧に任せると言ったのだ。
覚悟を決めるしかない。
廊下に出ると、一番後ろをついてきた和臣が
「なーなー。ファミレスじゃなくてさ、こっから車で10分ぐらいのとこに、GJバーガーがあったんだよね。国道沿いの。俺、あれが食いたいんだけど?」
樹はくるっと振り返り
「君、まだ食べるの?夕飯食べたでしょ」
和臣はぷいっとそっぽを向いて
「俺まだ食べ盛りの若者だぜ?あんなちょっぴりじゃ夜中まで持たねえし。それにさ、病院食じゃなくて、なんかジャンキーなもんが無性に食べたい気分」
樹は月城に視線を向けた。
「月城さんは、大丈夫?」
月城は苦笑して
「いいよ。僕は君たちに合わせる。日本に戻ってきてからハンバーガーなんて食べてないしね」
「あ。じゃあさ、行こうぜ。すごいボリュームあって美味いって噂だけ聞いててさ、俺、食べたことないんだ」
GJバーガーは最近、東北にも進出してきた新しいバーガーショップだ。値段は少し高めだが、和臣の言うようにバンズとパテにボリュームがあって、フレッシュな野菜が溢れんばかりに挟まれている。東京でも若者に人気で、行列が出来る店とテレビでも取り上げられていた。
「うん。じゃあ、行ってみよう」
和臣が一緒だと賑やかだし、普段とは違う話題を提供してくれそうだ。気が紛れていいかもしれない。
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