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月の光・星の光11

「樹が前を向いて歩く為に……」 「うん。私や月城くんが樹くんに何を言ったとしても、君たちの間に誤解や思い違いがあったら、意味がないからね。樹くんが前を向いて自分の人生を生きるということは、君自身も今後前向きに生きていくことでもある。私は君たちの関係をそんな風に考えているんだよ」 朝霧の言葉に薫は深く頷いて、手をぎゅっぎゅっと握ってくれた。 今まで、朝霧の口からこれほど具体的に薫に関しての考えを聞かされたことはなかった。日々生きていくことでいつもいっぱいいっぱいだった自分と違って、朝霧はこんなにも自分たちのことを深く考えてくれていたのだ。 「お義父さん……僕は……」 樹は言葉を詰まらせた。感謝の気持ちを伝えたいのに、どう言っていいのか分からない。 朝霧は手を伸ばしてきて、樹の頭を優しくぽんぽんっと撫でると 「樹。私の口出しを余計なお世話と思わないでくれ」 「もっ、もちろん、そんなこと、思うはず、ないです」 「うん。だったらね、これからちょっとだけ、君は席を外してくれるかい?」 樹は目を見開いた。 「え……」 「私は君の話だけを今まで聞いてきている。薫くんにも同じように、腹を割って話を聞かせてもらいたいんだ」 樹は戸惑い、目を泳がせた。 「そ……それ、僕が、同席していては、ダメですか?」 朝霧はにっこり微笑んで 「もちろん。最終的には3人でまた話をしたいと思っているよ。ただ、まずは薫くんの見栄や体裁のない本音を知りたいと思っているんだ。きちんと本心を確かめてでなければ、私のアドバイスは的外れになってしまうからね。そこが見当違いだと、また拗れてしまうだろう?」 樹はちらっと薫を見てから目を伏せた。 朝霧のことを信用していないわけではない。自分の想いを誰よりも理解して導いてくれた人だ。 ただ、やはりどうしても不安なのだ。 薫にだけは言って欲しくないことが、自分には多すぎる。 朝霧は分かってくれている。でも、その部分を避けて、果たして薫と本音の話が出来るのだろうか。 「樹。私を信じてくれ」 朝霧が真剣な眼差しで見つめてくる。 樹は無言で見つめ返した。 ものすごく勇気の要ることだった。 胃の辺りが重くなっていく。 手先が冷たくなっていく。 自分の過去に関することだけは、薫に知られたくない。 でも……。 今は勇気を振り絞る時なのかもしれない。 朝霧は自分たちを心の底から案じてくれている。 樹は薫の手をぎゅーっと握ると 「分かりました。お任せします」 ようやくの思いで、言葉を絞り出した。

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