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月の光・星の光48
「あんたはあのおっさんに勝手に共犯者にさせられただけの被害者だよ。罪の意識なんか感じなくていい。あんな奴の為に、もう苦しまなくていいんだ」
きっぱりと断言する和臣を、月城は呆然と見つめていた。その顔が、くしゃっと歪む。
樹は膝の上に置いた手を、きゅっと握り締めた。
余計な口は挟まず、祈るような気持ちで2人を見守っていた。
今日、ここに和臣を連れて来て、月城に過去の懺悔をさせたことは、和臣の為だけじゃないのだ。月城の為でもある。
不意に、月城の目から、ぱたた…っと涙が零れ落ちた。自分でも思いがけなかったのだろう。月城は驚いたように手を頬にあてて、慌てて手の甲で涙を拭うと
「あ……ごめん。どうして…」
激しく動揺する月城に、和臣がぐいっと腕を伸ばす。ハッとした月城の手首を、和臣はぎゅっと掴んだ。
「我慢しなくていいよ、あんた、泣いていい」
「…っ」
「誰もあんたを責めたりしない」
「和臣……くん……僕は……」
月城の目から、大粒の涙が次々に零れ落ちる。こんな風に泣く彼を見たのは初めてだ。樹は自分の胸にそっと手をあてた。
月城は以前、まるで罪を犯した人のように項垂れながら、今の話を自分にしてくれた。その内容は、巧叔父から聞いていたものもあるが、知らない過去もあった。巧叔父と月城の関係の複雑さは想像以上だった。
あの頃、月城がどんな思いで自分に接し、どれほど苦しみながら、叔父に逆らって自分を逃そうとしてくれていたのか。当時の自分には想像もつかないことだったのだ。
その複雑な心情を告白されても、樹にとってあの当時の月城は、いつだって救いだった。本音が見えない謎の多い人ではあったが、自分の状況を理解して、出来る限り手を差し伸べてくれていた。それが、今になればいっそうよく分かる。
自分に対して密かに敵意を抱き、内心で葛藤していた月城に、申し訳なさを感じこそすれ、恨む気持ちなど毛頭ない。あの叔父に逆らった月城が、どんな仕打ちを受けていたのかは想像がつく。月城の伸ばしてくれた救いの手に、むしろ感謝したいくらいなのだ。
だからもちろん、月城にはそう伝えた。
自分の思ったままを、素直に伝えようとした。
でも、月城は苦しんでいる。
「樹さんは自分を憎むべきだ。許したりしてはいけない。僕があの時不甲斐なかったせいで、君は何年も苦しむことになったんだ」
月城は頑として譲らず、自らを断罪し続けている。
口下手な自分がどんなに月城に思いを伝えても、虚しく空振りしてしまう。
彼と自分の立場は複雑過ぎて、思いはストレートに伝わってくれない。
嫌なのだ。月城がそのことにずっと囚われ続けているのが。和臣の言う通り、月城も自分と同じ被害者なのに。
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