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月の光・星の光47

「そう…だね。憎んでいたんだ……多分。でもそれ以上に僕は、樹さんを助け出さなきゃいけないと焦ってもいた。僕と同じ苦しみを、この子に味あわせてはいけないってね。ただ……それが樹さんに対しての純粋な思いやりなのか、単に巧さんを独占したかったから、樹さんを遠ざけようとしていただけなのか、自分でもよく、分からない」 そう言って自嘲気味に苦笑する月城に、和臣はそっと目を伏せた。 月城の人となりは、まだよく知らない。出会ってからそれほど経っていないのだ。 でも、悪い人間には思えない。 複雑な内面を抱えているのかもしれないが、少なくとも自分は彼の言動から優しさや思いやりを感じてきた。性根の悪い人間ではないと思う。 多分、樹に対しての思いは複雑だったのだろう。樹の身を思いやる気持ちと嫉妬する気持ちは、きっと彼の中で矛盾することなく同居していたのだ。 人の心なんて、白黒くっきりつけられるわけじゃないのだから。 「別に変じゃないよ。月城さんのその状況だったらさ。樹さんの存在は複雑だっただろうなって、俺にも分かる」 目をあげてきっぱり言い切ると、月城は少し驚いたように目を見張った。和臣は首を竦め 「や。あんたが巧のおっさんを独占したい気持ちは、正直俺には分かんないけどね。あのくそジジイに魅力なんか全然ねえもん」 隣で樹が、小さく吹き出した。 「くそジジイ……」 和臣は樹の方を見て首を竦め 「だって、くそジジイだろ?どう考えても。若い頃は見てくれは良かったかもしんないし、大学の先生とか立派な肩書きもあったんだろうけどさ。中身が最悪。好きになる要素、ゼロだろ、あんな男」 吐き捨てるように言うと、今度は正面にいる月城が、小さく吹き出した。 「君ってほんと、……いや、そうだね。あの頃の僕に、そうキッパリと言ってもらいたかったな。目を覚ませって、君に叱って欲しかったよ」 和臣は、ふんっと鼻を鳴らした。 「俺も全力でそうしたかったな。でもさ、月城さんがあいつに囚われちゃった状況は、ちょっと理解出来たかも。あんたには選択肢がなかったんだね。他の道は全部塞がれてた。子どもの頃のあんたは、他に選べる道があるってことすら、きっと知らなかったんだろ?あの男があんたをそういう風に育ててたんだもんな。だったら仕方ねえよ。あんたは悪くない。あいつが全部悪いんだ。あんたは1ミリも悪くない」 「……っ」 月城は息を飲み、目を見開いた。 和臣はムスッとしていた表情を和らげて 「あんたずっと、助けて欲しいって言えなかったんだよな。辛かったよね、月城さん」 「……和臣、くん……」

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