13 / 15

初デートは東京見物 ―― 2

あ、キヨさん、アレ乗りたい!」  と、言った時には既にそちらへ向かって  駆け出しているユーリ。    彼が ”アレ乗りたい!”といったのは  隅田川を走る観光遊覧船だ。    吾妻橋から出ている船で人気なのは、  お台場海浜公園コースと豊洲へ向かうコースらしい      これから妻の見舞いに行くというサイラス・ミーシャ  親子とはここで別れ、  清貴とユーリはお台場海浜公園コースの遊覧船へ  乗った。      時刻はちょうど日没間近で、  陽が沈みかけている西の空いち面が茜色に染まり  まだ薄っすら残っている空の青と相まって  そのグラデーションがとても美しい。    そしてゆっくり視線を下ろせば沿岸に建ち並ぶ  ビルの群れもちらほら明かりが灯り始めて、  一層ロマンチックなムードを盛り上げる。      自分の頬へ伸びてきた清貴の手が涙を拭った事で  ユーリは自分が泣いていた事に気づいた。     「あ ―― おかしいな……なんで、涙なんて……」  近くにいた数組の親子連れの子供らもユーリの涙に  気がついて変な顔をしている。  (ねぇねぇお母さん、あのお兄ちゃん ――)    清貴はそんな子供らへ、おどけた仕草で”ナイショ”  と合図を送って。  ユーリの肩を抱き、人気の少ない所を探し、  ユーリが皆から死角になるような位置で立ち止まった。    なんせ走行中の船の上なので、こんな所くらいしか  好奇の視線を避ける場所がないのだ。    でも、ユーリはそこへ立ったとたん、  さっきまで無理に抑えていた涙が溢れ出て来る。   「ごめんなさい ―― ほんとにごめんなさい……」  自分1人、逃げてしまってごめんなさい。    皆んなを助けてあげられなくて、ごめん……。      それでも必死に声を押し殺して嗚咽するユーリを  抱きしめ、清貴はその背中を優しく撫でてやりながら  ただ ただ 黙って抱きしめ続けた。   

ともだちにシェアしよう!