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第10話
その日は俺はチームの皆よりも先に帰った。明日朝から会議があるし、なによりギリギリに帰って誰かに見つかったら終わりだ。ヤマダもなんか用があるとか言って早々に帰っていった。
まあ、皆ちょっと怒ってたけどまた俺を迎え入れてくれて、本当に暖かいな。………まあ、俺の黒歴史を知る人達だから、ちょっとそこは胸が抉られるけど。
寮の裏口の鍵を開けて寮の中に入った。この寮の裏口や特別棟を管理する役目は副会長と風紀副委員長にある。まあ、役得だ。
俺は一人部屋になってしまった自室に入り、風呂に入り眠りにつく。
***
次の日の朝、俺はいつも通り起きて仕度をする。
今日は朝に会議があるから、朝飯は後にしよう。そういえば、今日の会議は風紀委員会も世代交代して新メンバー初の会議だな、とふと思う。まあ、別に新メンバーだとしても関係ないんだけど。
俺コミュ障だしなあ…。
制服のネクタイを締めて眼鏡を掛ける。
黒い髪は不自然にならない程度に脇をワックスで固める。これで秀麗な副会長様の出来上がり、だ。
鞄を持って自室を出て、エレベーターを呼ぶ。
「あ、副会長~」
そう言って後ろからパタパタと寄ってくる清宮。
「副会長~、おはよう~~」
皆は清宮をチャラいチャラいというが、俺にはどうもワンコにしか見えなくて納得できない。
「おはようございます。清宮」
「会議なんてめんどくさいねぇ、副会長」
「それ、」
「?」
副会長副会長と言う清宮に違和感がある。言いづらくないか?副会長って
「言いづらくないですか?副会長って」
「………?うーん、普通?」
「………、そうですか。」
………………気まずい!!結果俺が言いたいことが宙ぶらりんになっちゃったよ!!あぁ、本当に俺コミュ障!
エレベーターが一階につき、二人で降りていく。
お互い特別棟に足を向けると、
「今日も一日、頑張ろうねぇ~~、実槻!」なんて言うので、なんとなく嬉しくなってしまい、
「………はい。…………月乃」と返した。
全力で喜んでしまったことがバレてないだろうか。
「ミツキって照れ屋さんなんだねぇ~」
と、月乃に言われて足を踏んづけてしまったのは致し方ないと思う。
***
今回の会議の内容としては、顔合わせが目的だったと言っても過言ではない。あとは四月頭の入学式と五月中旬にある新入生歓迎会について。
「それでは、今後ともよろしくお願い致します。」
そう言って締めた朝の会議は実にスムーズだったと思う。俺は余計なこと言うのは苦手だし、さっさと朝飯食いたくてパパッと進めていた。
……………だが、俺は朝飯を食う前にやらねばならぬことができた。
俺は退出しようとする風紀副委員長の腕を掴んで、
「………副委員長、この後一緒にご飯どうですか、」
そう言うと、ヤツは蛇のようなもの目を細めて
「えぇ、喜んで」
……………本当にコイツは策士だ。
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