12 / 33
第12話
ここ数日雨が降り続いている。別に雨が降ったからといって俺の生活に支障はきたしていないが、まああるとしたら外での体育が中での授業になったり荷物が増えることくらいだろう。
「いや、充分俺に迷惑かかってるからな」
ここは生物準備室。普段俺は裏庭で昼寝をするが梅雨の時期や冬は生物準備室が俺の居場所となっている。
「勝己(カツミ)君、別にいいじゃん」
俺が勝己君と呼ぶ人物ーー、正宗 勝己はこの教室の主である。
「勝己君呼ぶな!先生と呼べ」
「別にいいじゃん?今俺らしかいないんだし」
「………そもそも、ここは生徒が昼寝をするためにある場所じゃねえ」
「だってさ、俺人気モノよ?そこら辺で寝てたら襲われちゃうよ!」
「お前普段裏庭で寝てんだろうが!!」
「だから、今日は雨なんだってば!!」
ここ毎日このくだりをやっている気がするが、俺が素全開でいられるこの人物は俺の母方の叔父にあたる人物である。この人には俺が小さい頃からお世話になっていて、この高校を志望したのも勝己君がいるから、というのもある。
「ホラホラ、昨日の夜ばあちゃんからおはぎ送られてきたから、これで勘弁してよ~」
「………………いいだろう」
この人は教師で口うるさいけど、こうして毎週俺に送られてくるばあちゃんのおはぎをこうして餌にすれば、結構チョロいのである。
「あ、勝己君、糖尿………」
「……………夕飯気をつけるから良いんだよ」
……………糖尿寸前の癖に、大丈夫かなあ……
***
「来月、学期末試験の後に体育祭が行われる」
放課後の生徒会室に入り、皆が集まった瞬間永束がそう切り出した。どうやら、話し合いを始めるみたいだ。
「毎年Fクラスの参加を見合わせているが、今年はどうするか決める」
Fクラスは問題児が集まるクラスなため、基本的にイベントごとに参加はしない。これはかなり差別的だな、と思うが、チームvillainがFを占拠している今大丈夫な気がするけど。………体育祭は去年面倒臭すぎてサボったからFクラスが参加していなかったのを知らず、思わず微妙な顔をする。それについて案外目敏い花沢が質問をしてくる。
「アレ、比呂先輩、去年参加しなかったんですか?」
男のはずなのに可愛らしい声で訪ねてくる花沢に、「えぇ、丁度家の用事と重なってしまったんです」と返す。そのやりとりを見ていた永束は見事なスルーで話題を先に進めいていく。
「原先輩、去年は何故Fクラスの参加を見送ったんですか。」
そう永束が二年連続生徒会役員の原先輩に質問する。
「……………Fの、代表が……自分から、不参加と言ってきた。」
この人は自己紹介の時ほとんど喋らずに不安を覚えたが、最近になった少しずつだが喋ってくれるようになった。ゆっくりで小さい声だが、俺は落ち着いていて静かで綺麗な声だと思う。極度の人見知りらしい。
……つまり、Fの代表ということはユキさんのことだろう。どうしてなんだ?それは聞いてみないとわからない。
「わかりました。この件は3F黒谷雪路と話をつけてから話し合う。次に生徒会はパトロールを……」
永束は、二年生で生徒会長を務めるだけあって要領もよく仕事がよくできる。ただ俺様だから三年の原先輩にすらタメ口かましそうだな、とか思っていたけどそうでもないらしい。偏見だった。ごめん。
「………オイ、比呂。聞いてるか、てめぇ」
鬼の形相をして睨みつけてくる永束が思いの外怖かった。
「…………………………………聞いてませんでした」
俺がそう言った瞬間、月乃と花沢が「ブハッ!!」とすごい音をさせ、顔を伏せて肩を震わせてたけど、オイ、バレてるからな、笑ってるのバレてるからな!!
俺が皆の反応にムスッとすると永束は「テメェ、俺の話を聞け!!」と余計に怒りがファイヤーしまったので俺は大人しくシュンとしていた。
ともだちにシェアしよう!