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第17話

「パーカーを被った不思議な男?」 俺は昼休みに美作を呼び出して、その男について聞いた。 「知らんなあ…」 「美作」 「……………わーったよ、俺に頼むと高くつくぜ?」 美作は情報を仕入れそれを言い値で買う奴に売る、所謂情報屋だ。コイツの腕は確かである。 体育祭のあの事件は、やはりFクラス参加をよく思わない奴らの犯行でガタイのいい男達を使えばFクラスがやったように見せられると思ったようだ。 頭が悪いのか、小賢しいのか、何にせよ未遂に終わってよかったとは思うが、警備の隙をつかれたのは本当に悔しい。 「ま、結構有名な話だぜ?コレ」 「…………噂は噂です。貴方から聞いた情報とじゃ価値が違うでしょう。」 「…随分信用してくれてるようで」 そう言った美作の顔はちょっと照れていた。 美作が知っていた情報は3つ 奴の正体はわかっていないこと。 立場の弱い者を助け、身分や金を使って逃げる悪の粛清をするということ。 そして、人は皆奴を『アリー』と呼ぶ。 ………………『味方』、という意味も持つ「ally」。本来「アライ」と読むが「アリー」とも読める。 味方、なんて、まるでヒーローみたいだ。 「この学園の都市伝説みたいなもんだよ。困ったところに現れて颯爽と去っていく。結構みんな知ってるぜ?お前くらいだよ、知らんのは」 そう言われてしまえばなにも言い返せない。しょうがないだろう、興味がないんだから。 「で、どうしてそんなこと聞くんだよ」 「生徒間で妙な噂が流れていたので、生徒会として少しは知っておこうかな、と」 あの男を見たことを話したことで後にどう転ぶかわからない。なら、今は話さない方が賢明だ。 「………ま、そういうことにしといてやるよ」 どうやら見逃してもらえるよう。あざす。 何者なんだ、アリー、なんであの時、事件が起きていることを知っていたんだ。 俺はアリーの後ろ姿に酷い既視感を覚えていた。 *** ………………あの事件は解決、だがそれでめでたしめでたしとはいかないのが世の常で、なにか事が起こる度誰かが責任をとらなければならない。 しかし、そうは言ってもこの学園はもはや鳥籠。 親の財力でどうにかできるのがこの学園である。 今回で、生徒会そして風紀委員会は大変歯痒い思いをしていた。 「今回は山蛇がいい働きをしてくれた、風紀には感謝する」 今まさに俺も歯痒い思いを抱えながら、風紀委員会委員長と対峙していた。 「いや、そちらの副会長が気づかなければ動けなかった、礼を言うのはこちらだよ。」 互いの副を褒めそやし、腹を見せない両者。 風紀委員長、飯田 海斗(イイダ カイト)。俺はコイツが昔から大の苦手だ。 物腰が柔らかく、爽やかな笑顔を振りまくコイツは食えないというか、とにかく苦手だ。 しかし、今回の事件。俺は一つ疑問を抱いていた。 比呂は「山蛇が全員倒してくれました。俺は時間を稼いだだけです。」と言っていたが、それでは時間が合わない。 山蛇が到着するまでの時間と比呂達が犯人と被害者を連れてくる時間が合わない。 …………山蛇が到着した頃には、既に奴等は誰かの手によって拘束されていた、これが一番筋が通る。邪推だが。 だが、今回の件で多くの人間が自分はなにもできなかった、と悔しい思いをしている。 俺もその一人だ。特に酷いのは比呂で、笑ってはいるがいつものキラキラは消えていた。 これから長期休みに入っていく。夏休みが開ければまた文化祭、学年ごとに校外学習が行われる。 その為には、一度休まなければならないだろう。 俺は生徒会室に戻ったら、待っている奴らに今日の仕事はもう終わりだ、と言ってやることにした。 第1章・終

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