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第2章・第18話
夏休みが明け、次々と生徒たちが実家に帰省していく中、俺はまだ生徒会室に閉じこもっていた。
「…比呂、お前は帰らないのか」
永塚にそう声を掛けられ、「この仕事が終わるまで全然帰る気一切ないです」なんて言ってしまえば、この最近オカンな会長様に無理やり帰省させられそうなので曖昧に笑って返す。
すると、永塚は心底呆れた顔をし、「…はああぁぁぁぁぁぁぁぁ」と地獄の底より深いため息をついて、一度上げた腰をもう一度下した。
俺はその一連の流れを見、びくびくしていると、永塚は俺を思いっきりにらんできた。
「別にお前を待ってるわけじゃねえからな。…やりわすれた仕事を思い出しただけだ。」
そう言ってスマホをいじりだした永塚に、いや完全に暇つぶしにゲームやりはじめたよね。とも言えず、「ありがとう」と素直に言っても一蹴されるだけなので大人しく、「そうですか」と一言だけ言って、俺は仕事に向き直る。
俺がまだ、仕事をしているのには理由がある。
勘違いしないでほしいのだが、別に通常業務が疎かになっているだとかそういうことでは決してないのだ。
あの体育祭の事件。あれはおれの副会長というツラに泥を塗る事件だった。
別に、副会長なんて立場に、固執なんぞしないつもりだったが、この一学期嫌というほどにこの役職の責任の重さに気付かされた。
誰かのためなんて殊勝なことは言えないが、仲間のためくらいだったら俺は動いてやる。
今回は未遂で済んだものの、被害者がでてしまったという事実は俺の背中にのしかかってきやがる。
何故今回、警備に隙間が空いてしまったのか、突き止めなければ俺の気が済まない。
本当は体育祭準備期間にあきらかに監視カメラが少ないことに気付き、すぐさま増量を提案したが、急だった為に今回はそれが叶わなかった。…金持ちなんだから本気だせよ、とは思ったが。
しかし、それでも今回の警備に穴はなかった。なぜなら警備の配置をしたのは俺で、指示を出していたのは永塚だからだ。
それでも掻い潜ってきたということは、内通者がいるはず。
俺は永塚も早く帰れるように、作業を急いだ。
***
…ほら、ビンゴ。
俺の手の届く範囲内で悪さしたら、いかんよ?
…夏休み明け、覚えとけよてめえ。証拠取り揃えて逃げ場無くしてやっからな…。
「おい、…なんでそんなあくどい顔してんだ」
そう言われ、俺は永塚の顔をじっと見つめる。
「………なんだよ、」
じっと見つめられて、うろたえる会長様に俺は真顔で言ってやった。
「ちょっと、悪魔に憑依されてました。」
「…ちょっとやってみました、みたいに言うなよ…」
…最近永塚で遊びすぎて、お疲れのようでツッコミにキレがなかった。
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