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第1話

アイツに出逢ったのは高校2年生の新学期の教室だが俺は憶えてはいない。 だがアイツの存在に気づいたのは5月の昼下がり花壇のベンチに1人で座り弁当を食べている姿だ。 「唯斗(ゆいと)!早く行くぞ〜!!」 1年から同じクラスの林浩太(はやしこうた)が俺の歩みが止まっているのに気づいて声を掛けてくる。 今日は弁当を家に忘れて仕方なく食堂へ向う途中の事だった。 「あっ!」 俺は思わず声を出してしまった。 何故なら1人で座り弁当を食べていたのに数人の男子生徒が弁当を取り上げて地面に叩きつけていたからだ。 きっと相手はαの集団。 アイツはβなのか? どう見てもエリート集団が一般人相手にイジメをしているようにしか見えなかった。 殴る蹴るをされても逆らわずに耐えている。 俺は面倒に巻き込まれたくなくて見て見ぬ振りをし前にいる浩太に駆け寄った。 「何見てたんだよ。」 「何も見てない。早く行くぞ浩太。」 俺と浩太もαだ。 この学校には一般のβが7割で3割の中に居るのはエリート集団と呼ばれているαで数少ないがΩも居る。 エリート集団がイジメって何がエリートだよ。 それを見て見ぬ振りをする俺も彼奴らと変わらないから笑えてくる。 1人で笑っていると浩太が不思議そうに俺の顔を覗き込んできた。 何でもないと言って2人で食堂へと向かった。 そうあの日αに殴られているアイツの存在に気付いた初めての日だった。

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