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第2話

食堂から教室へ戻ると一番前の窓際の席にアイツは座っていた。 同じクラスなのか? 俺が見ているとアイツはゆっくりと俺の方に視線を向けるがその眼差しは氷の様に冷たいものだった。 αなんて嫌いだと言われているような気がした。 「座んないのか?唯斗。」 「おうっ、座る座る。」 背後から来た浩太に肩を軽く叩かれて我に返り俺は慌て自分の席に座った。 浩太は俺の前の席で浩太ならアイツの名前を知っているだろうか? 何故かこの時少しだけアイツを気にしていた。 どうしてか分からないけれど何故か微かに離れた席にいるアイツから甘い香りがした気がするんだ。 聞こうとしたがすぐに先生が来てしまい俺は授業が終わる頃にはアイツを気にしなくなっていた。 仲良くするわけでもないから名前を知らなくても良いと思ったからだ。 あの日の放課後の帰り道でアイツを見掛けるまでは本当に存在すら忘れていた。 忘れていたんだ。

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