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第6話
中庭に近づくにつれて飯田奏の甘い匂いが強くなってくる。
飯田奏の側にいて彼奴らは平気なのか?
クソッ!
午前中よりも強い匂いがする。
俺の理性は保たれるだろうか?
飯田奏を襲ってしまいそうなそんな感覚に俺は恐怖を覚えた。
中庭に着くと彼奴らは居なくなっていて飯田奏は1人で傷だらけの手で地面に落ちた弁当の中身を拾い片付けていた。
俺も近くまで行ってしゃがむと地面に落ちた卵焼きを飯田奏の拾い集めている弁当箱の中に入れた。
飯田奏は俺の顔をチラッと見るだけで何も言わずに弁当の中身を拾い集めていた。
「なあっ、いつからされてんの?」
「・・・・・。」
「傷は大丈夫なのかよ。」
「・・・・・。」
俺の質問を無視する飯田奏に少しムカついた俺は弁当箱を持っている方の手首を掴んだ。
何だこれ?
飯田奏の手首を掴んだだけなのに甘い匂いが強烈な勢いで俺の中に流れ込んでくる様な感覚。
ヤバイ!
そう思った瞬間に俺は飯田奏の腕を引っ張り立たせると嫌がる飯田奏を人が近付かない屋上へと強引に連れて歩いたというか無理矢理歩かせた。
急いで屋上に行かないと俺は・・・。
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