64 / 120
第64話
瑠樹愛side
「朱夏!」
「おかえりなさい。剣聖さん。朱夏さん寝てます」
「そうか…お前…ずいぶんがっついたみたいだな」
「…ねぇ。剣聖さん…これだけ啼かせても満たされないの…何でかな…俺は…こんなに朱夏さんが好きなのに…」
「…朱夏の気持ちがないから…だな」
「あんたは何で満たされるの?」
「ずっと好きだったから…やっと…繋がれたから…だからそれが幸せ…気持ちがないのくらいわかってるよ…」
「苦しい…辛い…もう…止めたい…」
「やめていいよ、その方が俺は助かる」
「やだ…」
「なんだそれ…」
「…おかえりなさい…南…」
「「え!?」」
「南…南…」
俺に手を伸ばして朱夏さんが触れてくる
「南ぃ…だぁいすき…」
朱夏さんの目は虚ろでどこか遠くにいるみたいだ
「南…おいでぇ…」
抱きすくめられて優しいキスをされた
「っ…」
苦しい…苦しいよ…朱夏さん…
「朱夏…起きろ…寝惚けてんな」
「ん?…せんぱ…っ…あ!ごめん!久米抱き締めてた」
「…」
「久米?何で…泣いてるの?」
「…朱夏さん…朱夏さんも…俺を見てくれない…俺…帰りますね。食事は置いてあるので食べてね。じゃあ。剣聖さんあとはお願いします」
朱夏さん…あなたも俺を見てくれなかった…きっと…その南さんは…俺に似てたんだね…だから…触らせてくれたんだ…優しくしてくれたんだ…
車に乗り込む…視界が徐々に歪んで行く…
このまま事故にでもあっちゃえば朱夏さん俺を見てくれるかな?…
トントン
そんな不穏なことを考えていたら窓が叩かれた。ゆっくり顔を上げるとそこにいたのは…
ともだちにシェアしよう!