76 / 120

第76話

「朱夏。ほら見てみ」 「なんですか?」 先輩が俺に画面を見せる。そこには幸せそうな久米と唇を重ねている美しい横顔の男性?が写ってた 「この人男性です?」 「そうだよ。バーの経営してる人で飛弦さんって言うんだ。」 「凄く綺麗な人ですね」 「あぁ。店でも多くの人にお相手をお願いされてた」 「そうなんですね」 「誰にも応じたことはないけどな。客とは一線は超えないって決めてたみたいだからね。でもな瑠樹愛を見るときだけ凄く複雑そうな顔してたんだ。だから瑠樹愛のことずっと想っていたんだと思う。でも瑠樹愛は客だし凄く葛藤してて…」 「それがどうして?」 「飛弦さんに弟さんがいたんだけどな」 「いた?」 「うん。亡くなってるんだ…その弟さんの交際相手だった人の今の相手が瑠樹愛の同級生らしいんだよ。だからその同級生の子が繋げてくれたのかもしれない」 「そうなんだ」 「瑠樹愛はお前に出会う前から飛弦さんには出会っていたんだが…元々自分を好きではない瑠樹愛は自分を一人の人間として見てくれている飛弦さんに気付いてなかった。そうこうしてるうちにお前と出会ってお前が瑠樹愛を瑠樹愛として見てくれたことが嬉しくて好きだと思ったんだと思う。で昨日のあれで…瑠樹愛なりに傷付いてそこの隙に入ったのが飛弦さんだったのだろう。かえって良かったって俺は思ってる。でないと瑠樹愛はいつまでも偽物の笑顔を張り付けて生きていかなければならなかったはずだから…」 「偽物…」 「違和感感じたことねぇか?あいつの笑顔」 確かに本当に稀だけど久米じゃない何か得たいの知れないものと話してる気分になったことは少なからずある。 「空雅が言ってたんだ」 「空雅?」 「あぁ…さっき話した瑠樹愛の同級生の奴。」

ともだちにシェアしよう!