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第6話

「ここ、お前の城なのか……?いや、その前に城に住めんの?」 「あのな……正真正銘俺の城だし、城にだって住めるんだよ。それにお前こそ名前で呼べよ」 「黒、城……」 「柊羽でいい」 「いちいちうるさいな」 「お互い様だろ」 生意気なこいつの話が本当で城の当主……だとすると、まさかこいつが鴉一族の末裔とか……じゃないよな? いやいやない。だってこいつ頭悪そうだし、そんな上手いこと怪盗BLACKCROWに会えるわけはない。 しかも怪盗と刑事で敵なのに、そんな敵相手に人助けなんかしないよな。 「あのさ……とりあえず教えてくれ。なんで俺はここにいるんだ」 「裏庭で倒れてたのを助けてやったんだよ。あんたさ、ヒート起こしてたろ?俺も間一髪ヤバかったんだからな」 聞けばこいつは純血の‪α‬らしく、俺の発情期特有の香りに理性を失いかけながらも助け、ここまで運んだらしい。 でも待てよ、どうして‪α‬のこいつが俺のヒートをかわすことが出来たんだ? ‪Ωのヒート期間はα‬が近寄ることすら危険で、‪α‬がもし同じくヒートを起こしてしまったら最後だ。 「なんで‪α‬がΩのヒートかわせるんだよ」 「それはこれのおかげ」 そう言っておもむろに見せられたのはカプセルのような長方形の形をした錠剤。 「これは普通の抑制剤よりも遥かに強い成分で出来ている。あんたの発作もこれで抑えた。まぁ、使い方を間違えなければ便利な薬ではある」 「発作……。あんな酷い発情の仕方は初めてだった……どういうことなんだ」 「まぁ、初めては誰だって戸惑うものだし。それは仕方ない」 柊羽からの答えが答えになってないような、会話が噛み合わないような……そんな、どこか不自然さを感じているとまた視界が少しだけ霞んできた。 「あーあ、またちょっとぶり返してきたな」 ……薄れる意識の中に聞こえてくる柊羽の声が次第に遠くなる。 そんな意識の中、突然唇に何かが触れ、次の瞬間冷たい水と一緒に何かを口移しで飲まされた。 「……ん……ッ」 流れ出るように口端から零れた水が首筋まで伝うと、それが多少の擽ったさを感じる。 そして口移しされたそのままの俺は次第に不思議な感覚に陥っていった。 拒もうとすれば拒むことは出来たはずなのに…… 柊羽は唇を離そうとせず、それは次第に深いキスへと変わっていった。 「……ん、ん……ッ」 「……ッ……甘い……やっぱ限度があるな……」 「……ふ、ん……ッ……」 息継ぎの間に柊羽が呟く言葉を理解出来ないままの俺は、与えられる快楽を受け入れ、ただ流されるだけ。 何故だろう…… 会ったばかりのこいつにこんなことをされているのに嫌じゃない。 それにどこか懐かしいと感じる。 懐かしい? いや、違う…… もっとこう、 例えるなら────

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