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第8話
桜庭には、もしも二、三日しても連絡がつかなかったら探しに来て欲しいと古城に行くことを告げると真っ青になっていた。
別に死ぬわけじゃないし、念の為だと告げると少し落ち着いてたみたいだけど……
いつもアイツは心配性なんだよな、まったく……
はぁ……と、ため息を吐きながら城の入口となる重い扉を押すと、すんなりと中に入ることが出来た。
そして、やたらと大きな音を響かせながら扉が閉まると黒い鴉がどこからともなく現れ、俺の目の前に降り立つ。
真っ黒い姿の鴉はあっという間に人間に姿を変えると、そいつが俺を見るなりニヤリと笑いかける。
そして黒いタキシードに黒いマント姿の噂通りの格好に姿を変え、ゆっくりと俺の目の前まで歩み寄って来た。
「案外早く来たんだな」
「のんびりしていられない性格なもんでね」
やっぱり怪盗BLACKCROWの正体は柊羽だったのか……
「で、ヒートは大丈夫なわけ?」
「大丈夫じゃねーよ」
「そんなキレなくたっていいじゃねーか、『魂の番』に対してさ」
古城に近づくにつれ、あの時襲ってきた強烈なヒートと同じ感覚が身体中を支配していた。
そしてこれが『魂の番』のせいだと気づいた時、俺は運命とは残酷なもんだなと他人事のように、それでもその運命を受け入れた。
まさか親父を殺した一族の一人が俺の魂の番だなんて……
「出来たら遠慮したいくらいなんだけどな、お前が魂の番だなんて……ッ……」
そして強烈な何かが身体中を駆け巡り、呼吸は乱れ、次第に本能がこいつを求め始める。
「俺があんたの憎い敵だからか?」
「……ッ……やっぱり、お前……」
「雅楽川宗一郎……雅楽川千歳の父」
「やっぱりお前たちが親父を……」
柊羽の手が俺の髪を、頬を、唇をゆっくりとなぞるように触れながら距離を詰めると、
「俺たちが魂の番の事実は変わらない。お前がどんなに俺を憎いと思っても運命は抗えない」
そう冷たく言い放ち、俺をそのまま冷たい床に押し倒した。
「……ッ……やめ……ッ……ろ」
憎い敵だと意識する以上に、だけど……こいつが欲しくてたまらない。
苦しい……
熱い……
苦しい……
……でも欲しい
ドクドクと鼓動が速くなる度に理性が崩れて行くような感覚に意識が薄れていく。
もう、どうしようもない。
憎いはずなのに、
もう、どうしたらいいか分からない。
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