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8:強い言葉

イリを抱きしめたターリャが、毛を逆立てて狐の獣人に威嚇をする。同じように、ライタを抱きしめたシャールも睨みを効かせていた。 ターリャとシャールの突然の登場に、狐の獣人達は慌てている。どうやら、予定と随分変わったらしい。 「た、ターリャ様に、シャール様、」 「も、もう戻ってこられたんですか?」 少し怯えたように狐の獣人達が話しかけてきたが、どうやらそれも2人は気に入らなかったらしい。シャールが、狐の獣人達に向かって腹の底から唸り声をあげた。 「テメーら。俺と兄貴にお前らの妖術が効くとでも思ったのかよ」 「甘く見られたものだな」 シャールの目に見える怒りと、ターリャの目に見えない怒りに、狐の獣人達は身体を震わせた。 「っ、しゃーる、」 怒りに身を任せ、シャールが狐の獣人達に近づこうとした時だ。シャールに抱かれていたライタが、クイッと服を引っ張ってきた。 それに気づいたシャールがライタを見れば、涙を溜めた瞳を向けていて。 「も、やめて。早く、ここから離れたい、」 本当は、大切な人を傷つけた奴らを殴りたい。シャールはそう思っているが、ライタのこの言葉を聞いて殴る気を失くした。 殴るよりも先に、愛しき人の願いを叶えなければ。 よく見れば、イリもターリャにすがりついたまま泣いている。耳をすませば、泣きながら早くここから出たいと言っていた。 ギロリ。1度、狐の獣人達にキツイ視線を向けたターリャとシャールは頷き合うと、そのまま部屋を出ようとした。 「ま、待ってください!!」 出ていこうとするターリャとシャールを、狐の獣人の1人が引き止める。 「なんで、なんで僕達じゃダメなんですか!僕達の方が、ずっと2人を好きだったのに!」 「そうです!その美しくないΩよりも、何もできないβよりも出来るのに!」 狐の獣人達は、ターリャとシャールの怒りに触れたことにも気づかずに、ボロボロとイリとライタを貶し始めた。狐の獣人達の言葉が、イリとライタの心をズタズタに傷つける。 「「黙れ」」 狐の獣人達の言葉を遮るように、ターリャとシャールが一言声をあげた。 「俺がイリに惚れているんだ。それを、他人にとやかく言われる筋合いはない」 「βとかαとかΩとか関係なしに、俺はライタが好きなんだよ。それをグチグチ、うっせーんだよ」 そうターリャとシャールは言うと、何も言えなくなった狐の獣人達を後ろで控えていたヒトラに任せて部屋を出た。

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