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7:ヒーロー登場

狐の獣人達は笑いながらイリとライタをバカにしていたが、2人はあまりそれを間に受けないようにしていた。大丈夫。心配しなくても、自分達はターリャやシャールに、この国の人達に愛されている。だから大丈夫、と。 しかし、どうやら狐の獣人達はそれが気に食わなかったらしい。ツカツカと歩いて2人に近づいてきたと思ったら、思いっきりライタを突き飛ばした。 「ライタ!」 「本当、なんでβなんかがシャール様と婚姻を結んでるんだよ」 「っ、」 狐の獣人の1人が、突き飛ばしたライタを足で踏みつける。イリが止めようとしたが、もう1人の狐の獣人が同じようにイリを突き飛ばした。 「βの存在が1番ありえないけど、美しくないΩであるあんたもありえないから」 「っ、!」 「っ、イリには手を出すな!」 暴力にトラウマのあるイリがガタガタと震え始める。それに気づいたライタが、自分を踏んでいる狐の獣人を押しのけてイリに駆け寄る。そして、抱きしめる形で自分の腕の中にイリを隠した。 「何?ただのβが獣人様に逆らう気?」 「ありえないんだけど」 狐の獣人達の顔は見えないが、声で怒りに震えているのが分かる。怖いけど、もっと怖がっているイリを自分が守らなければ。 きっと訪れるであろう暴力に、ライタが唇を噛み締めて耐えようとした時だ。 「俺達の家族に何をしている。クズが」 「どけよテメーら」 ターリャとシャールが戻ってきた。2人して、入ってくる前から怒りのオーラをまとっていた。 「っ、たーりゃ…!」 ターリャが戻ってきたことに気づいたイリは、ライタの腕の中から抜け出して走り出した。そして、ターリャの腕の中に飛び込む。 カタカタと震えながらしがみついてくるイリの姿に、ターリャが怒りのオーラをさらに深いものにしていく。 「お前もこい、ライタ」 「っ!シャール…っ、」 未だに動けていないライタを、シャールが腕を広げて呼ぶ。シャールに呼ばれたライタは、操られるようにしてシャールの広げた腕の中に飛び込んだ。

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