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第4話

「後悔なんか、するはずがない。僕の望みが叶うのに」  ゆっくりとベッドに押し倒すと、エディは不安げな顔をした。 「ダニーは、僕で……できるの?」 「何を今さら」  抱いてほしいと言ったのはエディのほうなのに。今さら怖気づいたのだろうか、と思ったら違った。   「僕はダニーのこと好きだけど、……君はそういう意味で僕のことを好きじゃないの、分かってるから」 (本当は、俺もお前を好きだって言いたい。ずっと好きだったって)  口にしたいのを、飲み込む。両想いだと伝えたところで、結ばれることはできないからだ。ならば、伝えない方がいい。 エディはほんのり頬を赤くさせて、 「それに、人間だからいつでもできるけど、君は獣人だから発情期じゃないとできないだろ?」  本来ならばそうだ。ダニエルの発情期は二カ月ほど先だ。だが。  ずっと諦めていた、エディを抱くことができる、と考えただけで、体が熱くなるのが分かった。それがただ一度だけだとしても。  そして、エディの普段よりも強い甘い香りが、余計にダニエルを煽った。 「余計な心配しなくていい」 「でも、あ……んっ、ふ……」  まだ何か言おうとするエディの口を、自分のものでふさぐ。  初めてのキスは、めまいがするほど甘美だった。  オメガとのキスは、皆こんな風に甘いのだろうか。それともエディだけが、特別甘いのだろうか。  夢中でエディの唇をむさぼっていると、胸に押し当てられた腕を突っ張られ、強引に唇を離させられた。 「ん……っ。もう! なが、い……! 苦しい」  頬を赤く上気させ、荒く息を吐くエディが可愛い。肩で大きく息をしている。 「……キスをするときは、鼻で息しろよ」 「は、な……?」 「ほら、もう一度」 「んっ」  軽い酸欠状態で、いまだぼんやりしているエディの口を、再びふさぐ。苦しがっていないか確認しながら、そっとエディのシャツのボタンをはずして開く。甘い香りがより強くなった。 「あっ……ん、ふ……」  腹の裏側辺りを突くと、エディの嬌声はより強くなった。知識としては知っていたが、女のように濡れるのが不思議だった。ダニエルが腰を動かすほどに、ぐちゅぐちゅと水音が響くほどにより濡れているようだ。 エディが恥ずかしがって顔を手で隠すので、手をつかむ。嫌々と顔をそむけようとするのを、口づけて止める。 「顔、見せて」 「や……ぁ、恥ずか、しい……」  恥ずかしそうにしながらも、エディは顔をそむけるのをやめた。思い出したからだろう。これが最初の最後の逢瀬だと。  カーテンの隙間から照らされたエディは、とても美しかった。表情の一つ一つを、声を、絶対に忘れないようにしよう、と思った。  エディの両足を抱え上げるように抱き上げる。 「あ……や……深いぃ……!」 向かいあってするよりも深い場所に当たるらしく、エディは高い声をあげてダニエルの首元に手を回した。最奥をがつがつと突くと、 「あっ……!」    エディが背中をのけぞらせ、軽く身を震わせて達する。  ダニエルの腹に白いしぶきが飛び散ったその途端、  ぶわっ!  エディの甘い香りが部屋中に広がる。 「……? な、なんだ?」  めまいがしそうなほどの強い香りに、ダニエルはつながったままのエディをベッドに降ろすと、口元を手で覆った。  気を張っていないと、すぐにでも意識を持っていかれそうだ。そうしてしまったら、エディに無体なことをしてしまうかもしれない。  エディがうっすらと上気した顔で、荒く息を吐きながら言った。 「少し早いけど……始まったみたい」 「……ヒートか」  『人よりも強い』とは言っていたが、ここまでとは思ってなかった。もしダニエルがアルファだったら、ラットになってしまったかもしれない。  ダニエルは、自分の右腕を噛んだ。うっすらと血がにじむ。 「ダニー? な、何やってるの?」 「こうしないと、おまえのフェロモンに持っていかれそうだったからな。これでまだ意識を保っていられる」  困惑しているエディに、ニヤッと笑いかけた。 「ヒートなら、まだイケるよな?」 「ま、だやるの……?」  さんざんお互い出した後なのだ。エディの言い分はもっともなのだが。 「ウサギの獣人に迫るなら覚えとけよ。ウサギの性欲は桁違いってな。……今度は出さないで、いってみよっか?」  耳元で囁いて、ダニエルは再び腰を動かし始めた。

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