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第1話
「はぁ…疲れた」
大きなため息を吐き出しつつ俺は帰路についていた。
俺はブラック企業と言うものに勤めていて、無茶な納期を言い渡してきた上司に言われるまま仕事をこなしてきたところだ。
コンビニで弁当と缶ビールを買って疲れた足を引きずるように家に帰る。
スーパーマーケットが開いている時間に仕事が終わることは滅多にないので近所のコンビニが俺の生命線だ。
「マジかよ…」
いつもの帰路が夜間の工事中で通行止めになってしまっていて、俺は肩をおとす。
「うぉ!!はぁぁぁ???」
渋々迂回すべく普段通らない道を歩いていると、何かを踏み抜いてしまったらしく身体が傾く。
受け身すら取れないまま落下する感覚に俺は叫んでしまう。
深夜に近い時間と言うこともあり、人通りがまったく無かったのを思い出して俺は死を覚悟した。
チラリと上を見た瞬間に、落ちたであろう穴が見えて俺は怒りが込み上げる。
工事現場の迂回路で何でマンホールを開けておくんだ。
危ないだろと思いつつ俺は落ちていく。
ドサッ
「いたっ」
やっと底についたのか身体に衝撃があった。
周りは当然ながら真っ暗だったが、水の気配はない。
汚水まみれにならなかったのは幸いだが、こう暗くては自分の状況も分からない。
俺はスーツのポケットを探る。
チャラチャラと金属がぶつかる音に、鍵束は無事だったことに気が付く。
「最悪だ…」
鍵束に着けていたペンライトを電灯させると、うっすらとだが周りが見える。
不思議な事に周りは岩がごつごつとしていて、パイプのなかと言うより洞窟内と言うのが正しいかもしれない。
今更ながら手に痛みを感じて自分の手を見ると、手のひらを擦りむいている。
チリチリとする痛みを誤魔化すように立ち上がって手すりがないかを探す。
「はぁ…地下の下水管なのに、何でこんなに岩がごつごつしてるんだよ」
俺は出口を探すべく歩き出す。
下水管は狭いと思っていたのに、壁は見えずじっとしていても始まらないので出口を探すことにした。
深夜に差し掛かろうとしている時間と言うこともあり、人通りが全く無かったのを思い出し、これは救出を待つより自力で探した方が早いと思ったのも大きい。
「あ!光だ!」
どれくらい歩いていたのかそろそろ不安に思い始めた頃、やっと光を見つけ俺は思わず走り出した。
革靴が立てる音が辺りに響く。
「え?うわっ!」
あと少しで出口と言うところで何かに足を取られ、転倒しそうになる。
俺は足を踏ん張ってなんとか転倒を免れるが、足に絡み付いた物に俺は度肝を抜かれた。
それは長細いヌルヌルした物で、例えるならミミズに似ている。
俺はそれを振り払おうと足を上げるが、後を追うように絡み付いてきた。
「気持ち悪っ…」
触るのは躊躇われたが、それを引き剥がそうと手を伸ばした。
それはすぐに手に絡み付いてきて、ぞわっとした悪寒に思わず手を引っ込める。
「ちょっ!なんだ?」
今度は反対側の足も取られ、どんどんそれが上へと上がってきた。
気持ち悪さに払い除けようとしたところで、遂に本格的に手にまで絡み付いてくる。
「がっ!?」
完全に足を取られ後ろに引かれると、身体を引き倒される。
そのまま身体に謎の物体が絡み付いてきて、口許にも数本集まってきた。
俺は気持ち悪さに強く口を引き結ぶが、更に数本集まってきて口の周りをヌルヌルと這う。
「ぷはっ!あぐっ?!」
謎の物体は口をこじ開ける為に鼻を塞いできたので、俺は耐えきれず口を開けた瞬間に数本入ってくる。
口を大きく開けた状態で固定され、ずるりと大きな物が小さな群れの間からあらわれて俺は本格的にまずいと思って腕を振り上げようとした。
柔道をしていたから腕力には自信があったのだが次々絡み付いてくる物体すら振りほどくことができない。
「あ…」
太い物体が大きく開かされている口許に近付けられる。
良く見ると、太い物体にはボコボコと背骨でもある様な凹凸があり、先端には何やら液体が滲んでいた。
俺は余りの恐怖に身体がカタカタと小刻みに震える。
口を固定している物体を噛み千切ってやろうと顎に力を入れようとしたところで太い物体が口の中に押し込まれた。
「おぐっ…ぐぇ」
喉の奥に強制的に押し込まれる物体に嘔吐感が込み上げてくる。
「んぶぶぶ!!!!」
息苦しさで目の前がチカチカしてきたころ、喉の奥で何かが弾けた。
熱い液体が胃の中に直接注がれても、口の中の物体は出ていかない。
気持ち悪さにとうとう胃の内容物が込み上げてくる。
俺の嘔吐物を吸収するように口の中の物体が動いたあとやっと口の中から出ていった。
「く…そっ」
頭の中では、この謎の物体は触手と言うものではないかと場違いな事を思いつつ俺は大きく息を吸い込む。
触手はうぞうぞと俺から離れていったので、俺は出口を目指して立ち上がろうとしたが身体に力が入らない。
さっきの注ぎ込まれたのは何かの毒かもしれないと頭を過る。
「な…んだ?」
ズキリとした痛みが背骨を駆け抜け、俺は直感的に危機を感じた。
痛みはどんどん全身に広がり、節々からバキバキと音がし始める。
俺はこんなところで、謎な触手に毒を飲まさせられて餌にされるんだと思うと涙が出てきた。
「うぅ…」
痛みが全身を包み、意識が朦朧としてきたところでさっきの触手がまた近付いてくる。
俺が弱ってきているのが分かったのか、ズルズルと身体を引き摺られ何処かに運ばれはじめた。
俺を巣でゆっくり食べるつもりなのかもしれない。
「いっ…は?ここ…どこだ?」
触手が俺を連れてきたのは、月明かりが降り注いでいる草むらだった。
下水管の中にこんなところがあるものだろうかと思っていると、再び身体が痛み出す。
今度は下腹部がズキズキと痛みだした。
「こっち来るな!」
再び俺の腕に巻ついてくる触手を今度は振り払って、痛む腹を押さえつつ俺は来た道を引き返そうと動く。
しかし、餌をそう易々と逃がすほどこの触手もバカでは無いようだ。
足にぐるりと触手が巻き付き、それから触手が身体に覆い被さってくる。
別の触手が口の中へ入ってきて、また何か液体が放出された。
液体が舌に触れた瞬間、痺れが舌の上に広がる。
遂に俺は食べられてしまうんだという絶望感でいっぱいになった。
「ちょ…やめろ!」
触手は俺のスーツをどんどんと引き裂きながら剥いでいく。
靴やネクタイの小物からはじまりジャケットやスラックスまで奪われ、残るはYシャツと下着だけだ。
一思いに食べてくれればこんな恐怖に支配される事は無かったのにと、今更ながら怒りが込み上げてきた。
「ひっ!!」
太い触手が伸びてきて腹をズルズルと這い回るので、ライオンや肉食獣は捕らえた獲物の内臓から食べるというのを思い出してしまった。
しかし、その触手は一向に俺の腹を突き破る事はなく意味ありげに痛む腹を撫でるように動いている。
「んむっ」
口に入っていた細い触手は歯を撫で始め、さらにもう一本侵入してきて舌の表面を撫でる。
別の触手は無精髭がはえた顎を撫で、くちゅくちゅと口をかき回される音が辺りに響きだし、まるでキスをしているようだ。
今の会社に勤めてからあまりの忙しさに彼女とも別れてしまったので、キスなんて久しぶりすぎて頭がどんどん勘違いしてくる。
「ま、まてっ!何でそんなとこ…」
Yシャツの裾から触手が入り込んできて、俺の乳首を捕らえた。
乳首にぐるりと巻き付かれ、根本を刺激されながら乳頭部分も触手の先端で弄られる。
「いっ!なに?」
両方の乳首にチクリと痛みが走り、俺は嫌な予感に心臓がバクバクと早鐘を打ち始める。
「いたっ!」
やはり直ぐに痛みが襲ってきたが、先ほどと違うのはどうやら触手が俺の胸に侵入してきているようだ。
Yシャツのせいで、見えないのは幸いかもしれない。
しかし痛みは一瞬で終わり、痺れが全身に広がってきたお陰で恐怖だけが残った。
仕事の疲れと、この恐怖のせいなのか米神辺りがズキズキと痛みを放ち出す。
節々の痛みもまだ続いているらしく、ボキボキという音が聞こえる。
「んっ…ん…」
そんな俺の痛みを労う様に口の中の触手が舌を優しく撫でてきた。
俺は頭痛を誤魔化すべく、それに必死に舌を絡める。
すると次第に触手が甘く感じてきて、俺はすがる思いでそれをなめ続けた。
「ぷはっ!そこは…やめろ!」
遂に触手が下着の中へ侵入してきた。
足の付け根を撫で、ぺニスの根本にしゅるりと巻き付く。
別の触手が下着を引き下ろし下半身が露になる。
「ひっ!」
少し太めの触手が俺の目の前にあらわて、その先端が口のように裂ける。
裂けた触手の中は人の性器の様に濡れており、それが一段と恐ろしかった。
口を開けた触手が俺のぺニスに近付けられ、一気に飲み込まれる。
直接的な刺激に、腰が跳ねた。
触手は自ら前後に動いてピストン運動をしはじめる。
「くっ…くそっ」
ご無沙汰だったこともあり、俺は呆気なく果てる。
触手の中に盛大にぶちまけてしまったが、俺の精液を触手は排水溝に水が吸い込まれるが如く吸収していく。
「ひぎっ!」
触手は俺のぺニスを包んだままで、名残惜しげにぺニスの先端に何かを押し当てそれを一気に内部に挿入してくる。
身体が痺れていても、痛みは感じるのでその一瞬の痛みに声が出た。
胸も下半身も触手にいいように弄ばれているが、この生物がなんの目的でこんな筋肉のついた男の身体を獲物に選んだのかさっぱり分からない。
今俺に分かることは俺が被食者で、この謎のにょろにょろは捕食者と言うことだけだ。
その証拠に俺が動けない様に毒で痺れさせ、逃げないようにしている。
頭ではそんな冷静な事を考えつつ、俺はただ触手から強制的に与えられる刺激に身を委ねることしかできなかった。
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