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死の予知夢③

 僕は船首から海に飛び込んだ。氷の割れ目に落ち、深く深く沈んで行く。すぐに冷たいという感覚は無くなった。上も下も分からない。真っ暗で誰も居ない。もう誰も追って来てはくれない。 「……キ」  遠くから何かが聞こえる。 「ナキ!」 「……っ」  ハッとした。蝋燭の火が見える。 「どうした?(うな)されてたぞ?」  そう言ってアキークに顔を覗かれ、今が夜なのだと思い出した。ここはハーラ港の小さな宿の一室。 「いえ、少し怖い夢を見ただけです」  一瞬でさっきのことを思い出す。あれは予知夢だ。夢として見る予知は実際に事が起こるまでに時間がある。きっと、アキークは僕と一緒に居たから……あんなことに。  ────もう、あの船には乗ってはいけない。あなたと一緒には居られない。 「大丈夫だ、俺がそばに居る。お前が望めば、いつだって」  離れなければいけないのに、どうしてあなたはそんなことを言うのだろうか。そんな風に僕を抱きしめるのだろうか。その口で嘘でも、嫌いだと言ってほしい。その腕で突き放してほしい。  この声が好き、この瞳が好き、この人の心が好き。でも、僕は行かなければならない。好きだからこそ、愛しているからこそ、あなたから離れなければ……。

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