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雪豹の真実③

 首元の白い魔石に気が付いたからだ。こんなことになるのなら外しておけば良かった。この石を見られたら僕らは終わる。どちらにしても結末は変わらない。言葉で言い渡されれば番は解消される。 「やはり、貴様は海賊の手中に落ちていたか。もう貴様など要らん。番を────」 「ちょっと待て」  突然、左横から声がした。いつからその場に居たのだろうか、そこには壁に寄り掛かって立つアキークの姿があった。全く今まで誰も気配に気付かなかった。  ────そんな、どうしてアキークが? 「貴様、どこから入った?」  一人の兵士が声に反応しアキークに近付く。夢では船の上だった、でもここはアルシャムスの城、場所が違うのに嫌な予感がする。 「地下水路からだ。簡単だったぞ?俺たちはお前らライオンと違って泳ぎが得意だからな。まあ、そんなことより俺は交渉に来たんだ」  兵の横を抜けて、アキークが僕の前に立った。 「その毛の色……アルカトか、貴様は死んだと思っていたが……ああ、追い出されたのだったな」  今すぐにでも殺せと兵士に命じると思ったけれど、王は意外と冷静だった。この状況を楽しんでいるようにも見える。 「俺の名はアキークだ。アルカトなんて奴は存在しない」 「アキーク?その毛色で?」 「悪いか?」 「ふんっ、それで交渉とはなんだ?」  驚くことに王はアキークの話を聞くことにしたらしい。アキークには何か秘策があるのだろうか?いや、彼は一体何者なのだろうか。 「こいつを俺に寄越せ、番を解消する必要はない、精神的ショックで使い物にならなくなったら困るからな。その代わり、この国に手出しはしないでやる」  アキークが隣に立ち、僕を乱暴に引き寄せた。わざと乱暴に扱っているように見せているのかもしれない。 「貴様、我輩が国の勝利だけを求めていると思っているな?だが残念だったな、我輩は戦いを好んでいるのだ。他人の怯える顔や他人の不幸を見るのは実に面白い」  ────この男は歪んでいる……。 「ナキ、今から何が起こっても口を閉ざして動くな」  早口で耳打ちされ、僕はハッと息を呑んだ。  ────まさか……! 「その男を押さえろ」  王の言葉を聞き、僕の後ろに立っていた兵士と横に居た兵士のうちの一人がアキークの両腕を押さえ、僕と対面するように跪かせた。甲冑を着た兵士の鞘から剣を抜き取り、王がこちらに歩いてくる。どうして、アキークは抵抗しないのだろうか。 「死に晒せ」  勢い良く振り上げた剣を王はアキークの背に振り下ろした。 「愛してる」  またアキークは声に出さなかった。兵士の支えがなくなったアキークの身体は静かに僕の足元に倒れ、ピクリとも動かなくなった。赤い血が床に広がっていく。でも、僕はアキークに言われた通り何も言わず、その場からも動かなかった。

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