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第8話 群青の花
「ハァハァ…」
ハクハクと息継ぎをしようとアサはつながっていた唇を離した。頭を下げ赤く照る顔を髪で隠し、もぞもぞと身体を丸めようと、何かを隠そうとするような仕草に俺の心は躍る。
「アサ、大丈夫だ」
まじないのように唱えたのは、怯えさせないように。何度も使い古したこの言葉は俺とアサを繋ぐ魔法だ。
アサの身を包んでいた着物は身じろいだせいか乱れ、興奮を煽る情景を作り出していた。
どうした?なんて聞かなくても、俺も男だ。身体の変化に気づき、焦ったように動く様子に、何が起きたか理解できないわけはない。
小さな身体を包むキモノは、異国の島特有の美しい柄が描かれている。陶器のような肌に映える群青色の生地には小ぶりな花びらがいくつも散らばっていた。
ゆっくりと手を這わせると、慌てて小さな手が俺の手を掴んだ。
「ニール……ッア…」
アサの手をのせたまま自分の手を動かし始めると気持ちよさそうな声が耳に届く。強引に着物を剥ぎたいという狂暴な欲望が頭にちらつくのを理性をかき集め何とか俺は抑えた。
「気持ちいいか?」
「アッ…アッ…ッ!」
固く目を閉じ可愛く鳴くアサに自身の欲が痛いほど硬くなるのを感じる。
アサの欲に濡れた着物にゆっくりと手を入れると指先にぬめりを感じた。下穿きをずらし更に奥を目指すと小さな唇が吐息をもらす。この反応になぜ自分の顔がほころぶのかも理解できぬまま上下にゆっくりと手を律動させた。
「ンッンッ…アァァ」
興奮に揺れるアサの声は段々と大きくなっていく。
「いい子だな、アサ」
自分の口から出たのは欲に濡れた声色だった。
傷つけないように優しくゆっくりと亀頭を可愛がると、目の前の漆黒の頭は左右に揺れた。
「気持ちいいのか、アサ? いい子だな。大丈夫。もうイクか?」
半分以上言われていることなんて分からないだろうと思ったが、何よりも安心して欲しかった。無論、突然、不安になるような行為を始めたのは俺自身なのだが。
目元が涙に濡れ、頬を染めたアサの小さな口から発される鳴き声がどんどんと高くなりにつれ俺は手の動きを速めていった。
可愛い喘ぎ声が悲鳴になるころ、熱い飛沫が手の中で爆ぜた。
「ハァ…ハァ……」
アサは、酸素を求める魚の様に小さな唇を動かす。
汗で張り付く黒い髪を耳にかけてやると、濡れる瞼からつっと一筋の涙が流れた。
――ああ、涙でさえ綺麗だ。
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