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第9話 困惑の熱
次に聞こえてきたのは、規則正しい寝息だった。
船内で発見されて以来、いくつかの単語を覚えたアサだったが、会話が成り立つには程遠く、未だに年を聞くまでには至っていなかった。見た目から判断して、幼いのではないかと思っているが、船を修理している間滞在していたあの島国の人間は皆、祖国の者より若く見えたなと記憶を辿った。
この船にいるだけで、体力と精神を費やすことだろう。変わりのない自分の人生に突如現れたこの少年に理性を崩し、自分が行った行為に未だ困惑しながらも、俺は自分の腹部に目をやった。
今まで目の前で鳴き声を上げていた姿にすっかりと興奮したソレは鎮まる様子など見せていない。
「はぁ…」
漏れるため息と共に浮かぶのは、己に対する疑問だ。
眠りに落ちたアサに残念がっているのか?
この子に何をしたかったんだ?
困惑しながら、記憶に浮かぶのは欲に火照り蕩け目元を濡らすアサの顔だった。
ゆっくりと上下する小さな肩を撫で頭を撫で、静かに寝ているのを確認すると、行き場所のない熱を放とうと俺は浴室へと向かったのだった。
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