「ニール！！！！」 　バーンと音を鳴らして会議室の扉を蹴り開いたのはケンだった。 　「おいおい、ケン。いくらお前でも、それは行儀が悪すぎだろう」 　走ってきたのか、ハアハアと息を切らして膝に手をつくケンはしばらく話せないようだ。 　「どうしたんです？ ひとまずここに座って。あ、水を飲みますか？」 　甲斐甲斐しくケンの世話をしだしたショーンに俺は冷たい眼差しを向けた。 　「何があったんだ？」 　「えっと、はあ、あの、えっと、アサが、アサが…」 　「アサに何かあったのか！？」 　余裕なく立ち上がると椅子が床を打つ音が部屋中に響き渡る。 　「ニール、落ち着いてください。ケン、落ち着いて説明を」 　「うん、あの、アサがビスケットをくれて、それで、部屋に紅茶があったって思いだして、それで、紅茶を取りに部屋に戻って、アサに待っててって言って、紅茶を持って談話室に戻ったら、えっとえっと」 　「落ち着けって」 　「それでね、談話室の近くまで来たらね、ザックがアサを引きずってて」 　「は！？」 　「え！？」 　静かに話を聞いていたショーンと声が重なり、2人そろって席を立ちあがった。 　「ザックが何したって？」 　迫り寄ると、ケンが泣きそうな顔をこちらに向けた。 　「ザックがね、アサを部屋に引きずって行ったの」 　 　耳に届いたのは、信じられない言葉だった。