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第74話 独占欲の塊
「アサ、大丈夫か?」
我を忘れて腰を動かしアサの中に熱を放つと、俺は腕の中の小さな体がぐったりとしていることに気づいた。
ああ、やってしまったか。
自分の快感だけを追いかけすぎて「待て」と言い続けるアサのことを考えずに俺は、この子が気を失うまで貫き続けてしまったようだ。
未だにアサの後孔に収まる自身をずるりと抜くと、俺が放った粘液がだらりと流れ出た。
何も考えずにこんなに放ってしまって…それに応えようとするかのようにアサは可愛く啼いてくれた。
外はまだ明るい。
時計はまだ確認していないが、午後になったばかりだろう。
今からアサとひと眠りし目覚めたころにはショーンと会議ができるくらい元気が出ているはずだ。
濡れタオルでアサの体を拭くと、自分が残した鬱血痕の数に目を疑った。
アサの首、胸、二の腕、太もも…ありとあらゆる場所に痛々しいほどつけられたそれは、色白の肌を飾る小花のようだ。
「独占欲か…何やってんだ俺は」
離さない、俺のモノだという心の表れだろうか…
この状態で外に出たらあいつらになんて言われることやら…
「ン…ニール?」
「ああ、アサ、目が覚めたか。今身体を拭いたところだ。痛い所はないか?」
「ダイジョブ…」
「そうか…無理をさせて悪かった」
「ン?」
「分からないよな…大丈夫だ…体が痛くないなら良かった。少し昼寝をしよう」
「ヒルネ…」
「ああ、こうやってゆっくりしてよう」
隣に横たわり、裸のままのアサを後ろから抱きかかえると心地よい体温が体に伝う。
「こうしてまたお前と一緒に入れるなんて夢みたいだな」
「ナニ?」
「幸せだ」
「シア、ワ、セ?」
「ああ、上手だ」
「ボク…モ?」
「お前も幸せだと感じてくれているといいが」
「ン???」
「これからもずっと一緒にいるなら、もっと言葉の勉強をしなくちゃだな、アサ」
「ベ、ン、キョウ…ワカッ、タ」
「いつか、すらすらと会話ができる日が来るんだろうな。楽しみだよ」
「ウ…?」
「はは、まだ難しいよな。いつかだ、アサ。いつかその日が来るよ」
「???」
「大好きだ、アサ」
「ボク、モ」
黒髪に隠れた耳に囁くと頬が赤く染まった。
胸の前に置かれたアサの手には俺が贈ったバレッタが握られている。
大丈夫なんだ、もう悩むことはない。
この子は俺のもとに戻ってきてくれたんだ。
ベッドの奥に放り投げられたキモノは俺とアサの体液でぐしゃぐしゃに汚れていて、明日の出港時に着られるような状態ではない。
そうだ、ここで替えの服を何着か購入していたんだ。
アサには悪いが、このキモノは洗って船で干すこととして…
俺が仕立て屋で選んだ服をアサに来て船に乗ってもらうこととしよう。
そして何よりも美しい漆黒の髪をこのバレッタで結って…
段々と薄れる意識の中、俺は腕の中で寝息を立て始めたアサの洋装姿を想った。
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