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第94話 ケンは破廉恥な絵はダメ!

「見てみてみてーーー!!!!」 「ったくお前、静かに入ってこれねーのかよ」 「これない!無理!ってみんなだってわいわい騒いでるじゃん!」 「ケン、お前ほどではねーな」  アサを連れて談話室に来ると予想通り、休憩中の船員が数人集まっていた。  いつも通り、って言う感じなんだけど、この人たちって3人以上集まると声が大きくなってうるさいんだ。  僕もうるさいってよく言われるんだけど、たぶんそれって、この人たちに囲まれて育ったからだと思う!  だって、大声出さないと聞こえないからね! 「みんなで集まって何見てんの?」 「おい、それ隠せ」  バーニーって呼ばれてる船員が慌てて何かを隠した。  と、思ったらバサバサッって紙が何枚か床に落ちて…… 「わっ!アサ、目を瞑って!」 「ン?!」  僕は急いで横に立っていたアサの目を隠した。  危ない危ない。  昼間っから談話室でこんなものを見てるなんて信じられない! 「ねえ、なんでここで裸の人の絵なんて見てるの?」 「いや、これは」 「アサが見ちゃったらどうするつもりだったの?」 「そんなこと言われても」 「ニールに見つかったら大変だよ」 「あいつだって昔は見てたじゃないかー」 「今は絶対怒られるよ」 「「だよなー」」  そう、この人たち、太陽がサンサンと降り注ぐ昼間から破廉恥な絵を見てたんだよ!これは、夜に部屋でこっそり見るもんだってショーンが言ってたから、時間も場所も間違えてる! 「ケ、ン……?」 「あ!ごめん、アサ!もう大丈夫!もう安全!」 「ナニ?」 「えっとね、この人たちがね裸の絵をね」 「ハダ、カ……?」 「そうなのおおおおお!」  頭をこてんって傾けるアサはすっごーーーーーく可愛いの!  でもね、裸の絵を見せるわけにはいけないんだ! 「ソファーに座ろ!」 「ウ、ン」  談話室には1人掛けのソファーが2つしかない。あとは普通の机と椅子。  そっちでもいいけど、ゆっくり座るなら断然ソファーがいいし、部屋の隅にあるからアサと二人きりになれる。   「「ショーンさん、お疲れ様です!」」  ぴったり合った大声に顔を上げるとショーンが丁度部屋に入ってきたところだった。  仕事が終わったばかりなのか、制服のままだし髪の毛も後ろに撫でつけられている。  ちょっとだけ疲れてるみたい……?   いつもはきりっとしているのに、今はうーんって感じな表情だ。 「ショー、ン、ダイジョブ?」 「ああ、ケンもアサもこちらにいらしたんですね」 「どうしたの?」 「何でもないですよ。お茶でもいれましょうか?」 「うんうん!!そうだ!お菓子も持ってこよー!」    談話室にわいわいと騒がしさが戻ってきた。  僕はこのとき、ショーンが悩み事を抱えているなんて気づかなかったんだ。

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