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第211話 ケンは片付けが苦手

「冷めてからお裾分けに行こうね、アサ」 「ハイ、ニール、ト、ショーン」 「うんうん、それにサイもね」  僕の言葉に、アサはうんうんって頷いてる。ほらね、伝わってるんだよ、僕の言ってること。    ちょこちょこっと早歩きに後片付けをしている姿は、誰かさんが見たら大騒ぎしちゃうに違いない。「俺のアサは可愛い!」「見ろ、この可愛さを!」ってね。  僕も片付け手伝えって?  やってるやってる。でもどう頑張っても、きれいにならないのは何だろうね。魔法かな。  ゴミを捨てて~、お皿をこっちに運んで~、ボウルに残った生地を舐めてからあっちに運んで~ってやってるんだけどね。結局、「ボウルはゆすいでから水につけて!」とか「それは片づけたとは言えない!」って怒られちゃうんだよ。アサにも「ケン、ダメ」って何度も言われるし。調理台もしっかり拭いているつもりなんだけどなぁ。  ショーン曰く僕は詰めが甘いらしい。最後までしっかりと。使う前と同じ状態に戻せばいいんですよ、ってよく言われる。  ま、船長は「それでよくここまでやってこれたよな」って褒めてくれるんだけどね。え?褒めてない?褒め言葉だよ。絶対。  料理は得意だからそれが僕の仕事。アサはきちょーめんで、後片付けも得意だし、料理を覚えるのも早いから、僕とタッグ組むのにぴったりなの!二人で一つ。ってね。えへへ。  アサが来る前よりは、マシになってるってミリさんも言ってたんだよ!ほんと!ほんと! 「じゃあ、僕、ショーンにこれ渡してくるね!」 「ン、ボク、ヘヤカエル」 「えええ!?もう帰っちゃうの?渡し終えたら一緒に遊びたかったのに!」 「ニール、シ、ゴトオワリ」 「そっか……ううう僕やっぱニールに負けるんだね。ぐすん。いいもん!僕はショーンに会いに行くから!!!」 「ンゥ?ケン、ダイジョブ?アト。アウ。ネ?」  アサは両手で、クッキーの入った袋を大事そうに持って「ネ?」とかいうんだよ!反則だよね!僕も男だからね。ここで、わかったって言わないと。ふふん、僕は出来る男だ。 「わかったよぉぉぉ!夕飯の時また会おうね!それまで僕がいないからって寂しくならないで!大丈夫だから!アサは強いから!!!」 「バイバーイ」  くううう、可愛く手を振って小走りで去るだとぉ!?なんの新技!?効果てきめんで僕負けちゃったじゃないの!  ふう。厨房はきれいになったことだし(ほぼアサのおかげなんだけど)。夕飯の仕込みは出来てる。今日の夕飯担当は僕じゃなくてサイだけどね。あとは焼くだけ、ってとこまで仕込んであげたんだ。優しいからね僕。えへへん。  野菜と肉切っただけだろ?とか言わないの!そういうのがめんどくさいなーって時もあるんだから!それにね、グレービーソースは一から僕が作ったんだよ。  っと、そんなことより、さっさとショーンにこのクッキー渡して部屋に戻ろうかな。  どこにいるんだろ?今は仕事してないはずだから……  ショーンって自由時間に何やってるんだろ?いつも仕事してるイメージしかないや!

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