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第210話 ケンのクッキー

「できた!」 「デキタ!」 「わぁぁぁ!アサも上手に焼けたね。うんうん、今回のレシピの方がおいしそうにできた気がする」 「オイシイ?」 「オーブンで焼いてみないと分からないけどね」  クッキーづくりは結構力仕事。ボウルに入れた生地をこねこねさせて、テーブルの上でぎゅっぎゅってさせて、可愛い形にさせて、ちょっと味見をして、オーブンに入れる。そうやってると、ほら、こうやって顔が粉だらけになって、汗をかいちゃうわけ。 「僕のクッキー研究に参加してくれてありがとうね、アサ」 「ン、ダイジョブ。ケン、クッキー、スキ。ボクモ」 「うんうん、僕もー!」  トレーの上に並べた生地をオーブンに入れれば、あとは焼けるのを待つだけ。ここで重要なのは、焦がさないこと。もちろん、生焼けもダメだから、加減ってのが難しいよね。 「ニールが怪我したおかげで、このバターが手に入ったんだから感謝しなきゃね!」 「ニール?ナニ??」 「んもぉぉ!アサは可愛いな!説明難しいから、僕の言ったこと無視して!」 「ムシ?」 「そう!ムシムシ!僕が言うことに重要なことなし!」 「ムシ、ダメ」  そういったアサは眉間にしわを寄せている。多分、「ムシ」を「虫」って勘違いしている気がするんだよね。よくあることなんだけど、僕じゃあ説明できないから、あとはニールに任せてる。だって、なんでか分からないけど二人は通じるものがあるみたい。同じことを言ってもニールの言うことなら理解できるんだもん。  僕だって、アサと身振り手振りで「いしそつー」してるし、船で一番の親友なんだから負けてないわけだけどね。ふふふん! 「クッキー、ニールアゲル」 「だよね~アサが作ったものなら何でも食べそうだもんな、あの人。まずくてもおいしいって言いそう」 「ケン?ショーンアゲル?」  ああああああああ!  アサは自分の可愛さを理解していない人間ナンバーワンだと思うの。今だってね、首をね、こてんってね!!!!はぁはぁ。  息切れしちゃうくらい可愛いじゃないの! 「うーん、そうだな。試作品だしね。ショーンに食べてもらおうかな」  平常心平常心。  神様、僕の親友が可愛すぎます。    助けてください。 「そういえば、サイは結局来なかったね」 「サイ、イソ……ガシイ」 「って?今仕事の時間でもないのに?まーたお絵描きでもしてるのかな」 「ン、シラナイ」  一応。一応ね、誘ったことは誘ったんだ。だってそうしないと、ミリさんから「仲間はずれはだめだよ」って怒られちゃうし。サイにも友達は必要かなーってね。ほら、僕優しいから。まあ、ニールのことが好きだった過去は忘れてないけどさ。  アサに勝てる子はいないんだから!!!!  戦いじゃないのはわかってるけど! 「それじゃあ、サイにもちょっとだけお裾分けしよう」 「ケン、エライ」  えへへへへへへへへ。アサにいい子いい子してもらっちゃった! ――チーン!―― 「焼けた!」 「ハヤイ」 「今回のレシピは前のより、焼く時間短いからね」 「ウン?デキタ?」 「できたできたー!わぁぁぁ!」 オーブンの扉を開けた瞬間に、ふわぁぁぁってバターの香ばしい匂いがね!ふわあぁぁぁぁって。ああ、これは成功だよね。ちょっと広がりすぎて形が不格好になっているけど、成功だよこれは。

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