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「……葵」
生い茂る草木を掻き分け、愛しい人の名を呼ぶ祐輔。
葵を奪った狼の行き先なら、解っている。
囚人達の強制労働現場である山岳地帯で、一度だけ狼らしき影を見た事があった。
「クソッ……葵に手ぇ出してみろ。
首を掻き切って、息の根を止めてやる!」
右手には、サバイバルナイフ。
既に血塗れた刃先が、闇に包まれた密林の中で鈍く光った。
《完》
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