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蒼白い光が差し込む洞穴の入口へと向かえば、その姿が否応なしに曝される。
返り血を浴び、血に濡れ……
淡い光に照らされた啓介の顔は、もはや僕の知っている啓介ではなかった。
ガサガサッ、
不自然な葉の擦れる音。
先の茂みから、僅かに漏れる声。
導かれるようにして向かえば、そこにいたのは──
「……っ、!」
「ハ、ハァ……」
裸で抱き合う、倫太郎と女。
「──!」
……どうして。
胸の奥が、ズキンと痛む。
あの頃、僕は──
病気の母と二人、父の無事を祈り帰って来るのを待っていた。
……なのに、父は……
「二人は、『運命の番』だったんだよ──」
僕の胸中を察してか、僅かに口角を上げた横峯が答える。
……運命の、番……
「運命の番に出逢ってしまえば、自然の摂理には決して逆らえない。……理性には、敵わないんだ。
どうしようもなく、魂と魂が……惹かれ合ってしまうんだよ」
裏切られた気分だったに違いない。
ソレを目の当たりにし、相当ショックだったのだろう……
血に濡れた頬に流れる、一筋の涙。
繋がったままの二人に襲いかかり、啓介がサバイバルナイフを大きく振り上げる。
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