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×××
……熱い……怠い……
なんか、おかしい……
風邪……とは違う。何だろう……解らない。
まるで、灼熱地獄のよう。
体が焼け焦げる様に、熱い。
細胞のひとつひとつが悲鳴を上げ、肌は汗ばみ、呼吸は乱れ……非常事態に気付いた脳細胞が、思考回路を切断したみたいだ。
眠い……頭が重くて、怠い……
こんな日に限って横峯は、怪我人が出たからと強制労働の作業現場である山岳部へ出向いてしまった。
そのため、代わりに僕が監獄内の看護に当たらなくてはならない。
朦朧とする意識の中、重い体を何とか起こす。
……もう、本当に……回診に行かないと……
白衣を羽織りカルテを抱え、壁伝いに歩きながら病室へと向かう。
「………何だ?」
病室のドアを開けるなり、囚人の一人が何かに反応する。
「いい匂いがするぞ」
更にもう一人。そわそわと何処か落ち着かない。
時計を見れば、もう夕食の時間が迫っていた。
冷や汗を拭い、ベッドを回る。
僕を見る囚人達の目つきが、何処かおかしい。
……いつもと違う。
「今日の葵ちゃん、随分と色っぽいな」
「……ああ。俺でもソソられるぜ」
いつもは大人しい囚人の二人が、ニヤニヤしながら僕を厭らしく舐め回す。
その様子を見ていた他の三人が、ケラケラと笑い出した。
「ナニ発情してんだよ」
「俺はΩの女がいいぜ」
「はは、言えてる」
……Ω……?
ハッとして、全員のカルテを確認する。
男性、β
ここにいる全員、同じバース。
『Ωのフェロモンを感じるのは、αのみだよ』
そう、横峯から聞いている。
この島に、Ωはいない。
僕はβだし、Ωのフェロモンがどういうものなのか想像もつかない。
頭を小さく振り、気にせず最後のベッド──僕のお尻を触る囚人へと近づく。
「………」
いつもは騒がしいのに、今日はヤケに静かだ。
体温計を渡す。
受け取った男の指が伸び、僕の指にわざとらしく絡んだ。
『……ただし、例外もあってね……』
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