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初めてのキスだったのに……
揶揄いの道具にされたんだと思ったら、急に腹が立った。
「……き、キスでそんな……変わる訳……」
「じゃあ、エッチでもする?」
「ば、バカ……」
かぁっ、と全身が熱くなる。
耳元で囁かれたせいで、余計に。
「……出会った瞬間からって……書いてあったでしょ」
「そうだね」
「も、もし……祐輔が運命の番なら、もうとっくにΩになってないとおかしいよ」
間違っては、ないと思う。
なのに。相変わらず祐輔は揶揄う様に笑っている。
「……はは、そうだね。
バース転換の一般的な理由は、後天性だと言われてる。
でも俺は、無いとは言い切れないって思ってるよ」
抱き締めた腕に力が籠もる。
「だって、葵の家系は全員αだろ?
それが葵だけβって事は……ゆっくりゆっくり時間を掛けて、体がΩに変化している過程なんじゃないの?」
「……」
何処まで本気なんだろう。
時々、祐輔が解らなくなる。
……僕を慰めてるのか、揶揄って楽しんでるのか……
そんな事を考えていると、祐輔の鼻先が僕の項に触れ、それから耳元に唇が寄せられる。
「Ωになったら、迎えに行く」
冗談……なんかじゃない。
「……好きだ」
掠める鼻先。唇。
柔く掛かる、熱い吐息。
「大好きだよ、葵……」
ゾクゾクと、身も心も甘く痺れて……
擽ったいのに……熱く震えて……
「……ゅ、う……」
僕を抱き締める腕に触れ、与えられる熱に溺れ……
そのまま祐輔に心を委ねたのを……憶えてる。
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