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初めてキスをされたのは──十五の時。 その日はバース検査でβだと判明し、周りからの反応を受けて酷く落ち込んでいた。 誰とも会いたくなくて。 一人……診療所の備品整理をしていれば、開け放ったドアを二回ノックし、振り返った僕に祐輔が意地悪く微笑んだ。 「何か、手伝おうか?」 「──いい!」 強く突っぱねるものの、祐輔は涼しい顔で本棚の資料を漁りだした。 「……葵、これ見て」 不意に。視界の左右から祐輔の腕が現れ、資料を広げて見せる。 祐輔の匂い。背後から伝わる、祐輔の温もり── 緊張しながらも目で文字を追えば、それはバースの属性転換に関する論文だった。 『恋愛とは違い、DNAで引かれ合った運命の番は、出会った瞬間からそれに適したバースに、一方または双方の体が作り替えられる事がある』 「もし葵が運命の番と出会ったなら、バースが変わるかもしれないな」 「………そんな、事」 戸惑う僕の身体を、祐輔が力強く抱き締める。 「じゃあ、試してみる?」 耳元で囁かれた後、顎先に指を掛けられ、肩越しから迫る祐輔が視界に入る。 薄く閉じられた瞳。少し薄い唇。 僕の唇にその熱が触れた瞬間──嫌じゃない、って思った。 「どう。……何か感じた?」 「……え、えっと……」 慌てて顔を正面に戻し、唇に指を当てながら考え込む。 「はは、やっぱ葵だな」 視野の端で、祐輔が含んだように笑う。

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