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第74話 蜜月 Ⅲ〜side創〜
「…はぁ」
横から大きな溜息が聞こえて 重たい瞼をゆっくり開けた
ゆうごは腕を目の上に置いていて その表情がよく見えない
でも すごく疲れている事は伝わってきて、申し訳無さが込み上げてきた
「…ゆ…ご…」
「あ ごめん 起こしたか⁇」
優しいゆうごの言葉に 首をゆっくり左右に動かした
謝らなきゃいけないのは 僕の方だもん…
「…ごめんね……僕…迷惑かけたよね…」
「え⁇」
「…あ…あんなの……おかしい…よね…」
あまり覚えていない部分もあるが、情けない姿を見せてしまった事が恥ずかしくて、ギュッと枕を握った
しかも 寝ている僕を お風呂にまで入れてくれて、ベッドも朝と同じ様に綺麗になっている事を考えると、相当な迷惑もかけた自覚があった
ゆうごに嫌われちゃってたらどうしようと思うと、じわりと涙が浮かぶ
そんな僕を ゆうごは抱き寄せた後 おでこにキスしてくれて、ビックリした僕は そこを押さえながら顔を上げた
「全然おかしくなんてないよ
俺なんて エレベーターの中からずっと、創とエッチする事ばっかり考えてたし」
「…え⁇」
「引いた⁇」
僕は 先程よりも早く 首を横に振った
ゆうごも 僕と同じ事を考えてくれていたのかと思うと、ホッとするのと同時に顔がニヤけてしまいそうになる
「創のあんな姿が見れて 俺は嬉しかったよ⁇」
「…ゆうご」
数秒間見つめ合うと 吸い込まれる様に唇を重ねた
少し心に余裕が出来た僕は、今日ずっと気になっていた事を 勇気を出して訊いてみた
「…あの」
「ん⁇」
「ぼ…僕を買うのに…お家買えるお金 払ったって…」
「…ああ」
ゆうごは斜め上の方を見ると 困った様に笑った
「創は 何も気にしなくて良いんだよ⁇」
「で でも…僕が ワガママ言ったから…」
そんな大金払って貰う価値が 自分にあるとは思えなくて、また視線を下に向けた
そんな僕を見て ゆうごは フッと笑うと、僕の髪を 梳く様に撫でてくれた
「創が言ったからじゃないよ
俺も ずっと一緒にいたいって思ってた
昨日、明日 ちょっと話そうって言っただろ⁇
本当はその時に 俺と 一週間いてどう思ったか、訊こうと思ってたんだ」
「…え⁇」
「もし 俺の事 少しでも良いなって思ってくれてたら、もう 一週間居てもらうか 創さえ嫌じゃなければ、ずっとココにいて欲しいって言うつもりだった」
「…ほ…本当…⁇」
「本当だよ 俺 創に一目惚れしちゃったから…」
照れ臭そうに笑うゆうごに 嬉しくて涙が溢れた
それらをゆうごは 親指で優しく拭ってくれたけど 全然止まらない
どうしたらこの気持ちを表現出来るんだろう
結局その方法が分からなかった僕は、ゆうごの背中に腕を回して ギューッと思いっきり抱きついた
「好き‼︎ ゆうご…好き‼︎」
「俺も…大好きだよ…」
ゆうごが僕の頭を撫でていた手を下にズラして項に触れた
その動作に 図々しい期待がどんどん膨らんでいく
心臓が ドキドキと凄い速さで動いて、ゆうごに聞こえないか心配だった
「…創」
「…ん」
意を決して ゆうごの服を強く握ると ギュッと目を瞑った
でもゆうごは 項にあった手を、僕の頬に移動させて そこをまた撫でている
拍子抜けしてしまった僕が そろっとゆうごを見上げると、いつもの様に 優しく微笑んでくれた
「近いうちにさ 俺の父さんに会って欲しいんだ」
「え⁇」
ゆうごの…お父さん…⁇
「…あ」
僕なんかを受け入れてもらえるのか不安になってしまい、つい 目を逸らしてしまった
「大丈夫だよ
番相手は 俺に任せるって言ってくれてるから
ただ 事後報告は良くないからさ」
僕を宥める様に また頭を撫でてくれた
本当に大丈夫なのか その不安は拭えなかったけど、ゆうごを困らせたくなくて 首を縦に動かした
「大丈夫 厳しいけど 優しい人だから」
「…うん」
ゆうごのお父さん…
どんな人なんだろう…
ゆうごと同じ 完璧なαなんだろうな…
悶々と考えていると、ゆうごの手から力が抜けて ズシッと頭に重量が掛かった
そろりと隙間からゆうごを見上げると、普段より幼くなる寝顔があって 規則正しい寝息も聞こえてきた
僕も眠たい気持ちはあるのに なんだかソワソワとしてしまい全然寝付けなくて、ゆうごの服を また強く握っていた
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