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第82話 会食 Ⅳ〜side佑吾〜
「…ゆうご…僕…大丈夫だったかな⁇」
タクシーに乗り込むと、今にも泣きそうな顔で 創が俺の手を握った
その手を握り返し、反対側の手で 細い腰を抱き寄せた
「大丈夫だよ
創はまだ若いのに、テーブルマナーがしっかりしてるって感心してたよ」
褒め言葉のつもりで言ったのだが、創の顔色が暗くなったのを見て 少し焦ってしまった
やはり、まだ昔の事には 触れられたくない様だ
「ご飯美味しかった⁇」
話題を変えたくて そう尋ねると、創は 少し考える様な仕草を見せた後 もじもじとしている
「…よく分からなかった…ずっとドキドキしてたから…」
その言い方が何だか可愛くて 色素の薄い髪に唇を寄せた
「今日はいきなりゴメンな…次は二人で行こ⁇」
「…うん…でも僕…」
「ん⁇」
創は俺の上着をギュッと握り、クリッとした目で 俺を見上げてきて、運転手がいるというのに危うくキスしそうになった
「ゆうごのご飯が 一番好き…」
…今すぐ 押し倒したい
そんな思いを堪える代わりにギュウギュウと抱き締めると、創に苦しいと抗議されてしまった
「そう言ってもらえて嬉しいけど、俺はまた 創のご飯も食べたいな」
「本当⁇ 僕 いっぱい練習する‼︎」
「ん じゃあ 今度一緒に作ろ⁇」
「うん‼︎」
腕の中で満面の笑みを浮かべる創
その温もりを感じながら、俺は言い様のない幸せを噛み締めていた
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