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第165話 来訪 Ⅱ
「蓮 何か飲む⁇
コーヒー ココア お茶 オレンジジュース」
「…ココア」
蓮さんの返答に 意外だなと思ってしまった
何となく佑吾と同じ様にコーヒーをブラックで飲むのかと思っていた
今日着ているお洋服もシンプルな黒のVネックのセーターに細身のジーパンと佑吾の好みと似ている様に感じていたから尚更だった
「それ貸して⁇」
「あ、はい!!」
僕は手に持っていたタブレットを蓮さんに渡した
操作していく様子を横からジッと眺めるも、その手早い動きに全くついていけない
「一年生の教科書 全部入れておいた
操作自体は そんなに難しくないから」
「は、はい…」
蓮さんは丁寧にメモの付け方やしおりのはさみ方など 色々教えてくれて、その度に佑吾と一緒に驚嘆の声を上げた
「最近の高校生って進んでるんだな〜」
「もう割と珍しくないんじゃない⁇
まぁ、実際すごい楽だしね
取り敢えず こんなもんかな⁇
あと解らない事あったら いつでも連絡して⁇
携帯持ってる⁇」
「あ、はい…あの ありがとうございます」
「ん」
僕がお礼を言うと 蓮さんはポンポンと頭を撫でてくれた
こういう所が 何だか佑吾と似ている
僕の携帯に蓮さんの名前が表示されたのと同時位にインターホンが鳴って、佑吾が足早にモニターの前に歩いていく
「あ、佐倉」
佐倉さんの名前に蓮さんがピクッと反応したのが分かった
手に持ったマグカップを口も付けずにテーブルに置くと 髪を触ったり、足を少し動したりしている
その顔を盗み見ると少しだけ赤くなっている様な気がして、もしかして…という考えが僕の脳裏をよぎっていく
「お休みの日に申し訳ございません
明日の朝までにどうしても目を通して頂きたい書類がございまして」
「いや、むしろ休みの日まで悪いな ありがとう」
「とんでもございません では私はこれで」
佑吾がドアを開けっ放しで行ったおかげで二人の会話はリビングにもバッチリ聞こえていた
佐倉さん 帰っちゃうんだと思った瞬間、蓮さんは スクッと立ち上がると 上着と鞄を持って足早に玄関へと向かって行った
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