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第166話 片影
「では 私はこれで」
無事届け物を渡し終え 帰宅しようとしたその時、奥から来た人物に 目を見開いて驚いてしまった
「…佐倉」
名前を呼ばれてハッとなり 慌てて笑顔を作った
「蓮様 お久しぶりでございます」
「…うん」
少し会わない間に背がかなり伸びていた
そして何よりその顔立ちは、自分が初めて佑吾様と会った日を彷彿とさせられて 一瞬上手く笑えなかった気がする
「兄さん、俺 帰るね」
「ああ、今日はありがとな」
「別に…」
蓮様が靴を履いていると 創様が小走りでやって来た
今日も相変わらず、愛らしい容姿をしている
「蓮さん ありがとうございました
あの、気を付けて帰って下さい」
「ん、ありがと また学校で」
蓮様が立ち上がった瞬間、ほぼ目の前にそのお姿があって 自分より高い目線にドキッとしてしまった
一回り近く年下の子に 何をドギマギしているのか、所謂アラサーと言われる年代なのに恥ずかしい
「蓮様、お帰りでしたら ご自宅までお送り致しましょうか⁇」
気を取り直して 新たに笑顔を貼り付けた
少しの動揺も 決して誰にも悟られてはならないと、もう一度自分に気合を入れ直して
「え…良いの⁇」
「勿論でございます」
「ありがと…じゃあ お願いします」
「はい」
佑吾様と創様に頭を下げ、直ぐ後ろのドアを開けた
「ごめん…ありがとう」
そう言って自分の横を蓮様が通り抜けた時、佑吾様と同じ香りがして クラッとした感覚に襲われた
何とかその場に留まると 何事も無かった振りをしながら、ゆっくり扉を閉めた
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