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第1話
「あの屋敷には野獣が棲んでいるんですって。」
そう誰かが言っていた。
人里離れた先の木々が生い茂る場所にポツンと大きな屋敷が建っているそこには恐ろしい野獣が棲んでいるのだと人々が噂をしていた。
2本の足で立ち、人の言葉を発する。
昔は人の姿をしていたのだと話す者もいた。
皆気味が悪いと近寄らないが、たまに好奇心で足を踏み入れる者がいた。
だがそこに立ち入った者の中には帰ってこない者もいて、運良く帰って来ても恐怖からか震えて何も語る事はなかった。
そんな夜の屋敷に少年、ライは侵入してしまった。
しかし今はそんなことを考えている余裕は彼にはなかった。
草陰にうずくまるライの足を見ると裸足で、しかも体も傷だらけである。
どうしようかと迷った末、野獣に見つかる前にこの屋敷から離れようと立ち上がったその瞬間。
雲に隠れていた月が顔を出し月明かりに背後から映し出される影にライは身の毛もよだつ恐怖に襲われる。
「貴様、ここで何をしている?」
低音ボイスが夜風と共にやけに響いて聴こえた。
「あ……。」
振り向くのも躊躇われるが此方を向けと言う無言の圧力に遂にその姿を捉える。
「……っ!!」
振り向いた瞬間にライは息をするのも忘れるくらいの衝撃を受けた。
何故なら目に映るそれは、とても大きく2メートルを超えるであろう身長と何より人成らざるその姿は顔は獅子を思わせる鬣と鋭い目付き、口の間から覗く牙、そして鋭い爪がある。
まさに野獣。
その野獣が再び口を開く。
「今一度問う。
ここで何をしている?」
「あ……、俺……
お…れは……。」
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