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第13話

あの屋敷から遠くまで走ってきた二人はここまでくれば大丈夫かとお互い目を合わせ笑った。 「上手く行ったね、ロッド。」 「ああ。」 黒髪の美しい男に語りかけるライ。 そう、実は彼、ロッド本人だ。 ライが助けてと強く願ったその瞬間、ロッドは光りに包まれ形を人に変えていったのだ。 この美しい男性の姿こそが野獣になる前のロッドでその姿と初めて(まみ)えたライはあまりに美しい彼に思わず赤面してしまった。 「あ、あの……ロッド?」 「……姿が戻った。」 驚きを隠せない二人だったが今はそれどころではなかった。 外には沢山の兵が迫っている。 感動している暇などはなくロッドはどうにか切り抜ける策を練っていた。 そして、考えついたのはロッド本人も野獣のになることだった。 今のロッドを見ても誰も野獣だとは思うまいと二人で堂々と正面から出ていったのである。 その作戦は見事成功し二人は今ここにいる。 「これからどうするの?」 「そうだな、二人で旅でもするか。」 「旅…… うん。俺、色んなもの見てみたい。 ずっとこの町しか知らないし、海も見たこと無いから。」 海を見たいと言うとロッドはそうだなと優しく微笑した。 「海だけではなく他国の地にも行ってみるか」 「行きたい‼」 キラキラと輝く笑顔を見せるライにロッドは心から感謝した。 彼のおかげで寂しさも、人のぬくもりも、愛も知った。 今まで犠牲にしてきたものはずっと消えないだろう。 けれど神は今一度だけチャンスを与えて下さった。 今度は決して大切なものを間違えない。 そう心の中で誓った。 「じゃあ、行こうか。」 ロッドはライに手を差し伸べるとライはその手を取りまだ見ぬ地に想いを馳せながら歩きだした。 fin.

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