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第4話〜お兄さん〜
〜南side〜
ある理由で家を抜け出した。
なるべく遠いところへ、見つからないように、走って走って、知らないところへ…。
「ほんとに知らない場所に来ちゃった…」
ここはどこだろう。
少し息を整えながら周りを見渡す
でも1度も見たことがないところで、あぁ…僕は何をやっているんだろうと自己嫌悪に陥る。
途中で雨も降ってきて、少し疲れた僕は路地の近くに座る。
だんだんと雨も強くなってきたし、このまま死ねたらいいのに…
ばかばかしいけど
ふと気づいたら今の僕は雨に濡れていないことに気づいた。
見上げると僕なんかとは正反対のお兄さんが僕に傘を差し出してくれていた。
「…だれ?」
知らない人だった。
家は分かると言ったけど家には帰りたくない。
そう思ってつい連れてってと言った。
でもずっとお兄さんのところに居続ける訳にはいけないから明日には帰るからって言っちゃった。
今思うと少し話をしてこの人はいい人なのかもしれないと思えたから言えた事だと思う。
路地の近くに座ってた時は辺りは暗かったし、影で見にくかったけど、お兄さんの家に着いた時にちゃんと顔を見れた気がする。
正直びっくりした。
色素の薄いサラサラの髪に、優しそうな目、それにふと思うと低過ぎず、高過ぎず、心地よい声ということにも気づく。
とても美しかった。
僕の人生で、こんなにも美しい人を見たことがなかった。
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