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第32話〜キス〜

〜晴也side〜 南から聞かされた話は酷いものだった。 まだこんなに若いのに俺よりも苦しい生活を送っていたなんて… すごく辛かっただろう。 俺は南の頭をそっと撫でる。 南は甘えるように目を瞑った。 ……可愛い。 こんな時に思うのは不謹慎ということは分かってる。 けど可愛いものは可愛い…。 その様は子猫のようでずっと養いたくなるくらいだ。 南は満足したのか俺の瞳をじっと見た。 そして意を決したように問いかけた。 「僕のこと、軽蔑する?汚いって、思うでしょ…?」 ………なんだそれ そんなの、 「軽蔑するわけないだろ?」 南は何故か眉を下げて少しだけ涙目になっていた。 何故… 「でも、一つだけいい…?」 「ッ、うん…」 「今までよく頑張ったな。 これからは楽しいことがいっぱい待ってるから。」 ついに南の大きな瞳から涙が零れた。 それを優しく拭ってるやる。 「ぅん…ありがとぅ、ありがとぅ」 拭っても拭ってもポロポロこぼれる涙。 俺は南の目尻に軽いキスをした。 それに驚いたのか、さっきまでたくさん落ちてきた涙はもうなくなっていた。 「泣き止んだ。」 「…ずるぃ…。一つだけわがまま言ってもいい?」 「いいよ」 まるで最後の頼みのように問う南。 これからはいくらだって聞いてやるのに… 南はなんの前触れもなく俺にキスをした。 …頬だったけど。 「えっ、…南?? 我儘、は??」 「これがわがまま。 …ほんとに、ありがとね。こんなに優しくしてくれて。それにチューもさせてくれた。」 なんだよ… ほんとに最後みたいじゃないか。 まだ、これからもずっといるよな? 居なくならないよな? 怖くなる。 南が悲しい顔をしてるから、つい意地悪をしてしまった。 「これで俺にキスしてくれたの2回目だな。」 「えっ?」 「なに、忘れたの? ほら、2日目の時に俺が寝てると思ってキスしただろ?」 どうやら言っていることがわかったらしく途端に南の顔が紅くなった。 「え?な、んで…、知ってるの? えっ、あの時起きてたの? うわぁ〜!恥ずかしぃ〜…」 ついに小さな手で顔まで覆ってしまった。 やりすぎた… そんなつもりじゃなかった。 ただあの悲しい顔を早く南の可愛い顔に戻したくて。 謝ると南は逆に謝ってきた。 俺は嬉しかったから別にいいのに… でもまたなんで嬉しかったんだろうって疑問が生じた。 だって、可愛くても南は男だし。 男にキスされて嬉しいってどうなんだ…と思った。

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