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第31話〜11〜

もう希望も見えなくてただ黙って抱かれる毎日。 何もかも僕が悪いように思えていた。 こんな時にお母さんがいたら話を聞いてくれたのかもって何度思ったことだろう… でも僕が2歳の時に病死した。 けどある日、いつも鍵をかけられているドアが開いてることに気づいた。 「うそ…」 すごく胸が踊った。 だって今の時間ならお父さんとちさ兄は仕事に行ってる。 ひな兄も出張だ。 お手伝いさん達も今は休憩の人が多いだろう。 嬉しい。 僕は見つからないようにそっと家を出た。 行く宛もないけどとにかく走る。 夜まで走った。 夜は公園や路地を見つけてそこで眠る。 朝になったらまた走ってどこかへ向かう。 何日も続いた。 もともと無い体力に限界はすぐに来る。 雨も降ってきたし僕は路地の近くに座った。 みんな僕を見て知らぬ振りで通り過ぎて行くのに、1人だけは違った。 その人は僕に傘を差し出してくれて、すごく親切にしてくれる。 それがハル。 初めて見た時は美しさで目が眩んだ。 優しくされることなんてなかったから、裏があるんじゃないか、って考えた時もあった。 けどホントにいい人で、僕の心があったかくなった気がした。 ずっと居たい。そばにいて欲しい。 でもこの人を傷つけなくないと思ったのも事実。 ひな兄はハルの顔を知っていた。 ハルがサイン会やテレビに出た時に見たのかな…。 一緒に住むってなったけど、このままじゃダメだと嫌でもわかる。 ハルの家を特定して来るかもしれない。 そんなことにはならないで欲しい。 こんな汚い僕を早く軽蔑して欲しい。 もし、軽蔑もないのなら…… 僕から家を出よう。 軽蔑してっていう気持ちと軽蔑しないでっていう気持ちが混ざり合う。

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