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第36話〜大丈夫〜

〜南side〜 また…この家に来てしまった… せっかく逃げ出せたのに… 足が竦んでしまって少し小さな門の前で立ち止まる。 俯いていると、上から声がした。 「やっぱり。来てくれると思ってた。」 「ひな、兄…」 まだ僕は家にも入ってないのに、なんでいることがわかったんだろう。 いや、防犯カメラで分かるのか… 「あっれ、南帰ってきたんだ〜 よかったね、南。また楽しい毎日が始まるね!」 嘘つかないで… ちさ兄はすごく楽しそうにしてるけどきっと内心怒ってるだろうな… ちさ兄は上手くいかないことがあるとすぐ暴力的になる。 僕が逃げ出したことは予想外だったんだろう。 きっとまたあの窓もない、質素な空間で殴られるのかな… 嫌だ… でもまた逃げ出したらハルが危ない。 その方がもっと嫌だ。 僕はゆっくりとこの悪魔の住処に足を踏み入れた。 大丈夫、ハルとの楽しい時を思い出せば悲しくない。 大丈夫、大丈夫 前よりはマシなんだから 大丈夫、大丈夫 怖くない ほら、またいつも通りの生活が始まるだけだ。

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