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第46話〜白咲由理花〜

「えっ、晴くん?!」 「おや。知り合いかね、白咲くん。」 「えぇ、まぁ…」 白咲 由理花 3年前に愛していた女性。 先生と話している由理花は、前よりも少し大人びている。 先生が言うには南はこのまま安静にしてれば退院出来るそうだ。 よかった。 話が終わったので先生は部屋から出ていくが、由理花は立ち止まったままだ。 …なんだ? 「えっと、私と晴くんが知り合いだって知って、先生が少しなら話しててもいいって…」 この時だけは先生を少し恨んだ。 この個室の中に、俺と南と由理花だけというのはなんとも気まずい。 南は誰…?と言った顔をしていたのでとりあえず紹介しておく。 「こいつは白咲由理花っていって、まぁ、元カノ……」 「こんにちは、初めまして。白咲由理花です。 これからよろしくね、南くん。」 さっきまで南に元カノのことを話してたのに急に本人登場とは最悪だ。 そんなことを知らない由理花はニコニコと南に話しかけている。 南は少し人見知りらしくてオドオドしている。 「おい由理花、もういいだろ。 南も目覚めたばっかだしもう少し休ませてあげないと…」 「それもそうだね。 ……晴くん、ちょっとだけいい?」 「ここじゃ話せないことで、大事な話なの?」 「そんな感じ」 「………はぁ。 悪い、南。ちょっとだけここ離れるから、何かあったらすぐ呼べよ?」 「…ゎかった。」 南の病室から出て中庭に連れていかれた。 なぜ外に出るのか謎だ。 「ぇっと、久しぶり…だね。」 「まぁ…」 「元気にしてた?」 「まぁ…」 「晴くんかっこいいし有名人だから、病院内がざわついてるよ?」 「ふーん…」 気のない返事しかしない俺に、由理花はついに黙る。 「てか大事な話って? もしかしてこれだったりする? ならもう俺行くから」 俺が戻ろうと踵を返すと思いきり手を掴まれた。 「待って!晴くんにとってはどうでも良くても私には大事な話なの! ねぇ、私たちやり直さない?きっと昔みたいに戻れるよ」 「やめてくれ。俺達はもう終わったんだから。 そもそもお前が原因だろ… 憶えてないのか?」 「もちろん憶えてるよ。 でももうそれは前のことだし忘れたらいいんだよ。」 「今改めて思った。 一生由理花とはやり直す気はない。じゃ。」 俺はずっと掴まれていた手を無理やり離れさせた後、急いで南のいる病室に向かった。

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