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第53話〜二人の時間〜

話してる間、南はずっと俺の人差し指を握っていた。 時々握る力が強くなる時があり、ちらりと顔を見たら南はすごく哀しそうな顔をしている。 南が受け止めてくれると分かったからちゃんと話せたんだと思う。 「その、つまりあいつには近ずかないでほしい。南が傷つくところなんて見たくないんだ… もちろん、できる限りはずっと一緒にいるけど。 何かあったら…いやなくても連絡して。 すぐ駆けつけるから」 「ぅん、ありがと」 南は照れてるのか真っ赤になった耳を一生懸命手で抑えてるが、頬が紅いので無意味ということにまだ気づいてない。 …可愛いので何も言わないことにしよう。 南は下を向いてたがあるものに目がいった。 それはというと俺が持ってきたプレゼントみたいなもの。 「それ、なに??」 「ずっと何もしないなんて退屈するだろ? だから俺のおすすめの本とかいろいろ持ってきた」 「えっ! いいの?!」 「もちろん」 一瞬で目を輝かせた南に俺の心が踊る。 俺が持ってきたものや俺の言葉で喜ぶ南を見るとこっちまで嬉しくなる。 俺は結構このゆったりとした時間が好きだ。 まるでこの世界に俺と南しかいないような錯覚を起こす。 南の笑顔で俺の心も暖かくなる。 もしかして南は本当は天使ではないのだろうか…と頭の思考回路がダメになるほど思ってしまうほどだ。 南は早速持ってきた本を読みたいのかソワソワしている。 「読んでいいのにどうした?」 「ッえっと、僕が本読んでる間にいなくなったら嫌だなぁって…」 あぁ… 「ふっ、わかった。ずっとここにいるよ 机借りるぞ。ここで仕事する」 「…いいの?」 「うん、俺も南といたいし」 南はもう思うことはないらしく早速本を読み始めた。 俺はどこでも集中することができる。 特技か分からないがまぁ、できるので仕事をするのは正直どこでもいい ただ集中しすぎると外部からの音が聞こえなくなるので、何かある時は肩をトントンっておして。と南に伝えておいた。 こうして南の病室で静かな時間が流れ始める。

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