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第56話〜2〜

僕はどうすることも出来ずただオロオロするだけで、白咲さんは1人でまたさっきの優しい態度に変わった。 「ごめんね、取り乱しちゃった。 まぁ…話戻るんだけど、これ以上晴くんに近づかないで。迷惑なんだよ?」 これは…… ハルから聞いた牽制ってやつ…? 白咲さんは笑顔だけど、言葉はすごく刺々しい 「それに南くんってニュースでやってた藍川家のあの三男なんでしょ? ずっと居て、晴くんが後ろ指を指されたらどうするの?責任取れるの?」 責任 僕に何ができるんだろう だって僕は弱くて、無力だから… 僕は何を言われても平気だと思ってた。 僕の家族のこと 今までの僕のこと でもハルの事を言われると平気だなんて言えない… だってハルは大切で大好きな人で… 迷惑だなんて考えられなかった 僕は最低だ 自分ばかりで、やっぱり落ちこぼれ。 ハルには絶対迷惑をかけたくない。 僕のせいでハルの仕事にも支障をきたしてほしくないし… ハルのファンは僕だけじゃない。 たくさんの人がハルのファンなんだ 「晴くんは優しいから突然身近の人がいなくなったら南くんなんかにも心配して探すよねぇ〜」 つまり、白咲さんは事前にハルに言ってから消えろ、と。 そういうことなのかな… 「言いたいことはわかったよね? じゃ!話は終わり!病室まで送るよ」 「あ、大丈夫、です…」 「……ふーん。なんだ、晴くんに会いたかった。 でもまだ会える時間はいっぱいあるし、今だけ譲歩してあげる」 胸がチクチクするけど、こうして僕と白咲さんのお話は終わった。 でも僕は、帰る場所なんてない どこに行けばいいんだろう また、家出した時みたいに…? でももう僕はハルの存在を知って、ハルの優しさを知ってしまったから、辛くてまた戻ってしまうかもしれない。 なら、死んでしまえばハルは追えないし、帰る場所もあるのだから… 死んでしまおうか きっとそれがいい こうしたらハルに迷惑もかけないし、白咲さんだって……… いや、なんで僕は白咲さんに喜んでもらおうとしたんだろう ハルに迷惑をかけないって思ったけど、僕が死んだらハルはどうなるんだろう… 僕だったら、辛くて、悲しくて、寂しくて、ハルの後を追うかも… 僕はもうこれ以上1人で決めつけるのは良くないと思い、少し痛むお腹を抑えながらゆっくりと病室に戻った。

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