69 / 207

第69話〜5〜

勿論、かっこいいと思ってもらいたいのは当然だ。 だがそれだけだろうか もっと他にも……… 「ハル?」 ずっと黙ってた俺を心配したのか南は顔の前で手をフリフリしていた 「あぁ、ごめん。 なんか考えてた…」 「なんか??」 「うん…俺は南にどう思って欲しいのかって」 南は目をぱちくりさせた後、くすくす笑い出した。 何故だ… 俺は何か変なことを言っただろうか… 「み、南???」 「ふふふ、ごめっ、だってハル面白いこと言うんだもんっ…ふっ、……いたっ」 「え?!南?!」 「…えと、笑ったら力が入って傷口に響いちゃった…」 なんということだ 俺は南に痛い思いをして欲しくないんだ それに南が起きてからずっと無理をさせている気がする これ以上は休ませた方がいい 「南、もう休もう。 今の話は傷が治ってからな」 「…やだ」 「南。」 「やだ」 急に駄々っ子のようになりはじめた… どうすればいいんだ… 話を聞いたとしてもまた傷口に響いたら嫌だし… すると南はボソリと呟いた 「ハルが僕の話聞いてくれたら寝る……」 「でも傷口に…」 「大丈夫!! ただ話すだけだよ」 南の瞳は真剣で、俺は『なら…』と話を聞く 「ハルは僕にどう思ってほしいか考えてたんだろうけど、それって結構単純なものなんじゃないかな」 「単純?」 「多分だけど…ただ愛されたいだけ、なんじゃないのかなぁ」 愛されたい…? 何故だろう なんでか分からないが、南の言葉で俺の何かがすっと軽くなった気がした。 どうしてか今すごく心地良い 不思議だ さっきまでモヤモヤしていたのに、南に言われてからはモヤモヤは消え、むしろ清々しい程だ。 まるで魔法使いだな… 南は気づいてないだろうが、こういう無自覚さで人を救ってるんだと俺は思う。 そしてそういう所も俺は好きだ。 「ありがとな、南。 多分…そうだと俺も思う… 俺の考えてることなんてちっぽけだったな。さ、寝るか」 「ハルにとってちっぽけでも僕にとっては嬉しいことだよ? だってそれは僕のことを考えて出た悩みなんだから」 くそ… 可愛い… 前の南より今の南の方が好きで、これからはそれ以上に南を好きになってる自信がある どんどん成長していく南が今から楽しみで仕方ない。 こんな言い方はおじさんぽいかな…と思ったが南からしたらおじさんだな… もっと俺が若ければ…と思うかもしれないが、もしそれだったら南と出会ってなかったかもしれないし、俺は奏斗と友達になってなかったかもしれない そう思うと、いろんな巡り合わせで俺達が出会ったのは奇跡と言える…かも。 南が退院したら遊んで、あと仕事も片付けて、2人でやりたいことがある 南にはまだ言えてないけど、今後言えたらいいなと、俺は密かに思った

ともだちにシェアしよう!